本作は、『るろうに剣心 最終章 The Final』の公開からわずか約1ヶ月後に公開された映画でした。ただし『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は歴代の「るろうに剣心」シリーズとは全く違う特徴があります。それは本作が、主人公・緋村剣心がまだ“人斬り抜刀斎”として恐れられていた頃を描いているところにあります。
これまでのシリーズとの繋がりや、意外な登場人物など一度観ただけでは網羅できない見所もある『るろうに剣心 最終章 The Beginning』をネタバレ解説して参ります。
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は、これまでの「るろうに剣心」シリーズの前日譚にあたる物語です。直前に公開された『るろうに剣心 最終章 The Final』との二部作とされていますが、これまでのシリーズに登場してきた神谷薫(武井咲)や相楽左之助(青木崇高)といったおなじみのキャラクターも登場しないので、むしろ本作を単体で観ても楽しめる作品になっています。
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』で描かれる内容は、原作である漫画「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」でも19巻〜21巻にかけて収録されている“追憶編”として知られる回想場面がベースとなっています。
1996年〜1998年に放送された初めてのTVアニメ化の際には、この追憶編は描かれなかったのですが、後の1999年にOVA『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- 追憶編』として映像化を果たしています。このOVA版では、従来のTVアニメシリーズともキャラクターデザインを大幅に変更し、コミカルなシーンがないシリアスな内容となっており、アニメ版でも特殊な立ち位置にあるエピソードとなっていました。そんなOVA『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- 追憶編』も、『るろうに剣心 最終章 The Beginning』のクレジットに、制作協力として名を連ねています。
ついに具体的に描かれる雪代巴との因縁
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』では、剣心の元妻である雪代巴との因縁が具体的に描かれます。巴自体は、実写版映画第一弾となる『るろうに剣心』(2012)で、渡辺菜月が演じる形で登場していたり、『るろうに剣心 最終章 The Final』では『るろうに剣心 最終章 The Beginning』のシーンがそのまま登場するなど、これまでも作中で存在は、ほのめかされてきたのですが、ついに本格的な登場となりました。
また、『るろうに剣心 最終章 The Final』の戦いにも繋がることとなる、まだ幼い頃の雪代縁も登場しています。姉である巴を追ってきた縁は、闇乃武の一員として登場します。縁の巴への強い執着は『るろうに剣心 最終章 The Final』でも描かれてきましたが、今回の『るろうに剣心 最終章 The Beginning』では、巴も縁のことを気にかけていた様子が描かれます。
しかし、本作はまだその信念が生まれるまでの物語。これまでの剣心とは違い、相手を殺そうとする剣心の殺陣が存分に描かれる作品となっています。そもそも『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は物語の始まりから強烈。口に刀を加えてまで、多勢相手に一人で立ち向かう様子は、これまでの剣心に馴染みがある人も、一目でいつもの剣心ではないことが分かるのではないでしょうか。
ぜひ、その後の剣心の戦いと比較して見てみるのもオススメしたいところですが、幸いこの『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は“Beginning”とある通り、はじまりの物語。そのまま、再び実写映画シリーズの『るろうに剣心』(2012)へと地続きで観ることができます。残念ながら最終章を迎えてしまった実写版「るろうに剣心」シリーズですが、最後に前日譚を持ってきた構成は、なんどもこのシリーズを繰り返し見たくなる仕掛けだったのかもしれませんね。
(C)和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会