インバウンド・アウトバウンドという言葉には、英語で「本国行き、市内へ行く」という意味と「外国行き、市外へ行く」という意味がある。ビジネスシーンでも多く使われる言葉だが、その意味は使われる業界によって異なる。しかし、「入ってくる」「出ていく」という基本的な意味は共通しており、主に顧客の流入や企業側からのアプローチに関する事柄を指す。それぞれの業界での意味や課題、その対策を理解することが重要である。
インバウンド・アウトバウンドの意味
インバウンド・アウトバウンドという言葉は、「本国行き、市内へ行く」という意味と「外国行き、市外へ行く」という意味を持つ英単語である。これらの言葉はビジネスシーンでも多く使われるが、その詳しい意味は使用される業界ごとに少しずつ違っている。ここでは、業界ごとにインバウンド・アウトバウンドの意味を説明していく。
観光業界におけるインバウンド・アウトバウンド
観光業界において、インバウンドは「訪日外国人や海外から日本への旅行」、アウトバウンドは「海外を訪れる日本人や日本からの海外旅行」という意味で使われる。特に近年は政府によってインバウンドが促進されており、日本を訪れた外国人旅行客による消費活動やそれに関連する需要などが「インバウンド消費」や「インバウンド需要」と呼ばれている。
IT業界におけるインバウンド・アウトバウンド
IT業界においては、主に「インバウンドリンク」「アウトバウンドリンク」という言葉が使われる。インバウンドリンクとは、被リンクとも呼ばれ、あるWebサイトやWebページが他のサイトやページからリンクされることを指す。反対にアウトバウンドリンクとは、あるWebサイトやWebページから他のサイトやページへリンクすることを指す。ネットワーク分野では、ネットワークの外部から内部へ入ってくるデータをインバウンドデータ、内部から外部へ出ていくデータをアウトバウンドデータと呼ぶ。
コールセンター業界におけるインバウンド・アウトバウンド
コールセンター業界において、インバウンドは顧客から企業にかかってくる電話を指し、アウトバウンドは企業が顧客に向けてかける電話のことを指す。インバウンドコールの主な内容は、自社商品やサービスに関する注文や問い合わせである。一方アウトバウンドコールの主な内容は、商品の購入者などに対するアフターサービスや、テレアポを始めとする顧客へのアプローチである。
マーケティング業界におけるインバウンド・アウトバウンド
マーケティングの業界では、インバウンドとアウトバウンドもマーケティング手法の1つとして使用されている。インバウンドマーケティングとは、SNSやWebサイトを通じて情報を発信して顧客から自社を見つけてもらい、見込みの顧客を育成することで顧客の獲得を目指すマーケティング手法を指す。一方アウトバウンドマーケティングとは、テレビCMやダイレクトメールなど、企業からの一方的な情報発信によって顧客の獲得を目指すマーケティング手法を指す。
観光業界における課題と施策
観光業界におけるインバウンドは、日本経済の活性化に大きく関係している。そのため、政府は訪日外国人の旅行者数を2030年までに6,000万人へ増加させるという目標を掲げているが、新型コロナウイルス拡大の影響もあって課題も山積している。
政府はインバウンドと共にアウトバウンドについても促進させる狙いであるが、観光庁による出国日本人の統計によると、新型コロナウイルスの拡大によってアウトバウンドはその数を大きく減らしている。ここでは、厳しい状況におかれている観光業界の、インバウンド・アウトバウンドに関する課題とそれに対する施策についてピックアップする。
Webサイトの多言語化
日本は、公用語は日本語であり、国内で暮らすほとんどの人が日本語を母語としている国である。日本に住んでいる分には、日本語しか話せない状態でも何ら不便を感じることはない。しかし訪日外国人の視点から見ると、世界で広く使われている英語すらも使用が限られるという点は、日本を訪れる際の大きなハードルになる。
これはWebサイトも同様である。特にWebサイトは、世界中からすぐにアクセスできるため、日本への旅行者が訪日前に観光名所や宿泊場所などの情報収集をするツールとなっている。しかし、日本のWebサイトは日本語で構成されている場合が多く、外国人が希望する情報へアクセスする際の障壁になっていることもある。Webサイトを多言語化させると、日本語がわからない人にも情報を提供できる。そうして広く世界に向けて日本の魅力や必要な情報を発信することで、インバウンドの増加へと繋がっていくだろう。
魅力的なツアーの企画
政府はインバウンドと共にアウトバウンドについても促進を図っている。海外への日本人旅行客を増加させることで日本人の国際感覚を養い、グローバルな舞台で活躍できる人材を育成したり、草の根レベルで海外諸国の人々と交流し、相互理解や友好関係を深めたりすることを目指しているのだ。
しかし、近年のコロナ禍で国を越えた移動が世界的に厳しく制限された影響もあり、アウトバウンド数は低迷している。
そこで、旅行業者やアウトバウンド促進協議会などが、LCCを利用したり有名な観光地を行き先に設定したりした魅力的なツアーを企画することで、アウトバウンドを促進させるためのさまざまなアプローチをおこなっている。アウトバウンドの促進は、結果的にインバウンドの促進にもつながるというツーウェイツーリズムの考え方にも通じている。
IT業界における課題と施策
IT業界におけるインバウンド・アウトバウンドは、主にSEOの文脈で語られることが多い。SEOは自社のWebサイトを検索結果の上位に表示させるための施策であり、集客力やブランド力を向上させるためにおこなわれる。ここからはIT業界におけるインバウンド・アウトバウンドの課題と施策について見ていこう。
インバウンドリンクの設置
インバウンドリンクは、他のWebページに自分のWebページへ移動するためのリンクを張られることである。インバウンドリンクの数は、検索エンジンが検索結果を表示させる順番を決定するためにおこなう評価の1つであるといわれている。外部のページからのインバウンドリンクが多いということは、それだけ高品質な情報を提供していると判断されるため、検索エンジンからの評価も高まるのだ。
しかし、ただやみくもにインバウンドリンクを増やすだけではSEOは向上しない。インバウンドリンクを張る外部ページが、読者に有益な情報を提供する質の高いページでなければ、そのインバウンドリンクは評価されにくくなってしまう。そのため、インバウンドリンクを設置する際にはむやみにリンク数を増やすのではなく、数は少なくても高品質なページに、自然な流れでリンクを張る必要がある。
アウトバウンドリンクの設置
アウトバウンドリンクは、自分のWebページから他のWebページへ移動するためのリンクである。インバウンドリンクと同様に、検索エンジンがおこなう評価の要素の1つであり、アウトバウンドリンクのアンカーテキストやリンク先の質や内容をチェックするといわれている。リンク先と関係ないアンカーテキストであったり、リンク先のWebページが低品質であったりして読者にとってのメリットが少ないと判断されてしまうと、検索エンジンからの評価が低くなり、検索時の表示順位が下がってしまう可能性がある。
コールセンター業界における課題と施策
コロナ禍によるおうち時間の増大や、デジタルツールや技術の発展によって、通販などのインターネット市場は拡大を続けている。実店舗を持たずに通販のみで営業をする店舗も増加傾向にある中で、顧客との接点として近年重要視されているのがコールセンターである。コールセンター業界におけるインバウンド・アウトバウンドの課題と施策について解説する。
顧客から受けた電話対応
商品やサービスを購入した顧客や、これから購入しようとしている顧客から企業へかかってくる電話が、インバウンドコールである。インバウンドコールは質問や問い合わせ、注文、クレームなど多種多様な内容の電話がかかってくるので、それら全てに適切に対応しなければならない。そのため、業務やサービスに関する知識や問題解決能力など、高度なスキルが要求される。
インバウンドコールの対応は受け身なので、一見すると営業や売り上げとは関係ないように思える。しかし実際は顧客が電話をかけてくる時点でその商品やサービスに興味関心があるため、セールストークも聞いてもらいやすく、売り上げなどの成果にも繋がりやすい。だからこそ、適切な対応で顧客の満足度を高め、ファンになってもらうことが重要である。
インバウンドコールの対応を重視している企業では、コールセンターの職員をターゲットにした研修会を開催したり、対応マニュアルを作ったりして技能の向上を図っている。
テレアポなど能動的な営業活動
アウトバウンドコールとは、インバウンドコールと反対に企業から顧客へとかける電話のことである。今まで関係のなかった顧客ではない人に電話をかけて顧客の新規開拓をする施策はテレアポ、既存の顧客や見込みの顧客に電話で営業をおこなう施策をテレマーケティングというように、アウトバウンドコールの中でも種類が分けられている。
近年は共働き家庭の増加などにより、昼間に家を空けている世帯も多いうえに、携帯電話の普及で固定電話が減少し、有用性が以前に比べて低下している。しかし、コロナ禍で対面での営業活動が制限される中、電話でコミュニケーションがとれるという点は依然としてメリットだ。
無差別に電話で営業をおこなうスタイルよりも、ターゲットを絞って丁寧に営業をおこない、顧客と担当者が信頼関係を構築していくテレマーケティングが主流となっている。
マーケティング業界における課題と施策
技術の発展にともない、消費者は場所や時間に限定されることなく自分が興味ある情報にアクセスできるようになった。今までは、アウトバウンドマーケティングが主なマーケティングであり、企業が発信した情報を顧客が受け取るという一方的なシステムだった。
しかし近年は、顧客が自らの興味関心に基づいて情報を検索し、自分が必要な商品やサービスに辿り着くインバウンドマーケティングが増加してきた。顧客が情報の取捨選択をできるようになり、押し付けと感じられるような営業が敬遠されやすくなったため、自然な形で顧客の目に触れ、興味を持ってもらえるようなマーケティング施策をおこなわなければならない。ここからは、そんな中で企業がおこなっているマーケティングの施策を説明していく。
WebサイトやSNSの活用
企業がWebサイトやSNSを活用して顧客とコミュニケーションをとったり情報を発信したりすることは、今やマーケティングの基礎ともいえる施策になっている。スマートフォンが普及した現代では、顧客は欲しいものがあったり解決したい悩みができたりすると、まずインターネットで情報を収集するからだ。
しかし、ただWebサイトを開設したりSNSのアカウントを立ち上げたりするだけでは、自社の情報は数多の類似品や同業他社のサービスに埋もれてしまう。そこで、SEOで自社の検索順位を上昇させたり、SNSやブログなどを使って顧客に有益な情報を頻繁に発信したりすることが必要なのである。
企業が主導する見込み客へのアプローチ
ダイレクトメールやWeb広告、テレビCMなど、企業が主導する見込み客へのアプローチは、従来型のアウトバウンドマーケティングである。近年はインバウンドマーケティングが増えつつあり、アウトバウンドマーケティングは押し付けがましいイメージを持たれてしまいがちである。
しかし、アウトバウンドマーケティングがインバウンドマーケティングよりも劣っているということではない。インバウンドマーケティングでは、顧客が興味を持たなければ自社の商品やサービスを知ってもらうきっかけすら掴めない。
一方テレビCMなどは企業側が主体的にアプローチできるので、その商品やサービスを求めていたのに存在していることを知らなかったような、見込み客に対してアピールができる。また、高齢者のようにインターネットに不慣れな層に対しても、アウトバウンドマーケティングは効果的である。
このように、インバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングはそれぞれの強みがあるため、それぞれを上手に使い分けて適切なマーケティング施策を打ち出すことが求められる。
業界ごとの意味の違いや特徴を押さえよう
同じインバウンド・アウトバウンドという単語であっても、使われる文脈や業界によってさまざまな意味がある。しかし、どの業界においても大元の英単語の意味である「外から中へ」「中から外へ」というニュアンスからは大きく外れていないことが理解できただろう。基本的なニュアンスを理解しておけば、今回ピックアップした業界以外でこの2つの言葉が使われていても、大まかな意味を正しく汲み取れる。
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