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Wednesday, November 1, 2023

町田ゼルビア J1昇格 黒田剛監督のチーム改革とは J2初優勝も達成 - nhk.or.jp

ことしでJ2優勝し、悲願のJ1昇格を果たした町田ゼルビア。
昨シーズン15位と低迷していたチームを改革したのが、就任1年目の黒田剛監督です。
黒田監督は28年間にわたり青森山田高校の監督をつとめ、全国高校サッカー選手権では3度の優勝を果たした高校サッカー界の名将。初めてとなるプロチームの監督は、大きな挑戦だったといいます。一体どんな指導でチームを強くしたのか、迫りました。
(首都圏局/アナウンサー 伊原弘将、ディレクター 磯貝健人)

高校サッカー監督からJクラブ監督へ

Q.今シーズンを振り返ってどんなシーズンでしたか?

やってきたことに間違いはなかった。選手たちがしっかりと応えてくれた。順調なシーズンだったと思いますね。

Q.前年度はJ2で15位でした。就任当初はどのぐらいの成績をイメージしていましたか?

最初から掲げていたのは、昇格ではなくてJ2優勝です。やるからにはやっぱそこを目指さないと意味がないと思っていました。
どういうベクトルで進んでいくか、選手たちとともに、1月、2月の段階で共有してきました。ここまで1回の連敗もないというのは、組織がぶれずにできている要因ではないかなと思いますね。

Q.最初に監督のオファーが来たときは、率直にどう感じましたか?

正直、1年目から監督をやっていいのかなっていうような感情もあった。1年はコーチをやって、プロの世界が分かってから監督というのも1つかなって。
ただ、どうしても監督としてやってもらいたいと。勝つためのいろんなノウハウをこのチームに新しい風として入れることが、町田が夢をかなえるために必要だと。
そこまで言ってもらえるならやってみようかと。そしてやるからには、爪痕を残すぐらい大暴れしてやろうという気持ちを持ってここに来た。

Q.就任時は52歳。新しいチャレンジすることに不安や怖さはなかったですか?

そうですね。学校の退職まで13年。全国大会の常連校として、ある程度自分の地位とか立場っていうのが確立された中での挑戦。2021年に全国大会3冠をしたときに、ちょっと自分の心の中で空白ができて。自分自身が本当にそれでいいのかと考えたときに、新たなチャレンジをしていくほうが自分らしいという結論に至ったわけですよね。
      
このチャンスを逃したら、たぶん後悔するんじゃないかなって、自分の中でも思って、すごく反対もあったし、学園を辞めるときにはうしろ髪を引かれる思いではあったんだけど。不安ももちろんある中で覚悟したっていうのがこの発端ですよね。

徹底的な危機管理

Q.まず黒田監督はチームにどのようにアプローチしたのでしょうか?

去年1年間の51得点と50失点を全部見直した。正直、言い方は悪いかもしれないけども、高校生でもしないような失点が多々あった。確かに攻撃のクオリティー、守備のクオリティーは高校生よりも数倍高いものはあるにせよ、基本に忠実でなかったり、または、守備のいろはの「い」であったり、「ろ」であったり、そういった原理原則的なものがかなり散漫になっている。

守備とは何ぞやというものをしっかりとキャンプの中から選手たちに浸透させる。また私が掲げる守備の原理原則はこういうものだと定着させて、スタートさせていった。シーズン開幕前の練習試合でJ1のチームとも対戦したが、6戦やって全勝したことによって、彼らがこのやり方でいけると自信をつけていった。

Q.黒田監督が考える守備の原理原則というのは具体的にいうと。

これはシークレットの話にもなってくるから。サッカーっていうのはやりたいことをやるだけがサッカーではなくて、相手のやりたいことをやらせないこともサッカーであって、または自分たちは勝つためにはやりたくないこともやっていかなきゃならない。

相手の特徴をいかに消しながら、われわれが特徴を出していく。自分たちの武器を全面的に出していく。そのために相手の特徴をやっぱり消していかなきゃならない。消す作業がやっぱり多ければ多いほど、われわれの特徴っていうのは出てくるわけですから。やっぱりそういうサッカーっていうものをやったときに、初めて拾える試合が出てきたり、1対0で拾える試合が出てきたり、または、負けなくていい試合、またはうまく勝ちをもらえた試合、そういった試合も出てくるんですよね。
    
ぶれることなく自分たちの志向してきたサッカーをやり続けること。そして、例えば、守備に関しても、ゴール前で体を張ること、投げ出すこと、逃げないこと。
そこはやっぱり中学生や高校生でもできることを、やっぱりやっていくこと。それがやっぱり最後に勝敗を分ける大きな決定的な決め手になるっていうことも、やっぱりずっと春から言い続けていますから。

Q.開幕直後、スタートダッシュがありました。

開幕戦引き分けたあとに6連勝したんですよね。ただ、勝ち続けることなんて無理なので、早く負けたいと思っている自分がいましたよね。

Q.早く負けたい?

このまま行ったらチームがおかしくなるって思った瞬間がありましたよね。結果が出ていると過信や慢心がうまれて、気付いたときには手に負えないような穴になっている可能性が十分ある。弱点だとかミスを軌道修正しながらチームを強くしていきたいと思っていた。

Q. 黒田監督が浸透させたものがうまくいった試合は?

長崎戦ですね。ホームで4対1、アウェイで6対0というゲームでしたから、相手の優秀な外国人選手を全部シャットアウトしながら得点につなげていったっていうようなところもあるし。

あとはホームの山形戦かな。5対0というゲーム。かなりボールポジションの上手な相手に対して、そのポジションをかなり封鎖しながら、制限を加えながらボールを奪い、われわれの攻撃につなげていくという。すごく完成度の高い、われわれの意図することがしっかりとはまったゲームの一つだったかなっていう印象もあるし。

Q. 5対0で勝った山形の試合はストライカーのエリキ選手がけがした直後でしたね。

正直、絶望的な思いもしたけど、でも、ここでそれを言ってもしょうがないんで、しっかりとまわりの選手たちがいかに奮起すること。エリキ一人の穴をみんなが埋め、または、彼がいないことによって、何て言うんだろう、出てくる彼らのパワーとかエネルギーっていうものをうまく生かしたい。

エリキが長期離脱という悲劇的な状況になったときに、みんながやっぱり一人ひとりが成長できるチャンスでもあったし、ここまで18得点取ってくれた彼に対する感謝の気持ちを持って、さらに奮起しなきゃならない。あの勝利が、エリキがいなくても俺たちは絶対戦えるんだっていうような確信に変わった瞬間でもあったと思うし。

Q.チームをマネジメントする際、最悪な事態をいかに想定するかというところに意識は払っているんでしょうか。

そうですね、選手たちによく言うのは危機感の話です。負けたときの悲劇を感じながら試合をするほうがパワーは出ると思っています。試合に負けたら何かを失ってしまうっていう危機感、人はやっぱり失うことに対してすごいストレスを感じるので、それをパワーに変えるっていうのは意図してやってきた。

Q.マネジメントは高校監督とプロで変化は?

高校生はプロになるという目標かなえるために必要なものを学びにきているわけであって、教育というベースの上にサッカーというスキルとか、またはチームっていうものをしっかりと乗せていくという作業。
一方プロになってからは、選手個人のプライド、人生、家族という守るべきものがある。プライドを大きく傷つけることなく、いい道しるべとなるような方向性をしっかりと築いていかなければならない。
高校生、育成年代は上から引き上げる。プロは下から見守る。という、指導者の立ち位置が大きく変わるんではないかなというような感じはしますよね。

青森山田時代の黒田監督

Q.高校監督の経験がいかされていると感じる瞬間は。

30年の教員生活を通じて、言葉を伝えるということにすごく重きを置いてきたので、これをうまくやっぱり使わない手はないということ。
常に選手たちを奮起させるための言葉やキャッチフレーズで、なるほどなって思わせるようなものを彼らにやっぱり伝えていきたい。
日々の電車に乗ったときの広告を見ながら得られるようなキャッチフレーズもあれば、本を読んだり、またはテレビを見ていたりする中で、今のチームにうまくフィットする一つの言葉だなっていうものをスマホにメモしています。

町田そして来季への思い

Q.来季はJ1が待っています。どんな戦いをしたいですか。

J1のイメージとか、戦っていくイメージを持つには少し早いとは思うんですけど、でも町田という町は、静岡や埼玉というサッカーどころと言われるところに匹敵する、それ以上のポテンシャルを秘めた地域ですから。新たに町田のサポーターになってくれる人たちも出てくると思うので、その人たちの力を借りて、本当に上昇気流に乗って、一気にこの東京で一番のクラブになり、そして、世界に町田ありと言われるような、そんな時代が来ることを望んでいるし、または応援してくれている人たちもみんな望んでいると思う。

ホーム最終戦後、ファンの前で黒田監督は

チームは今シーズンのJ2優勝を決めました。29日ホーム最終戦のあとには、Jリーグ主催の表彰式が開かれ、ファンの前で、こうあいさつしました。

黒田剛監督
「J2優勝、J1昇格と目標を掲げてみたものの、実現できるか毎日不安と戦っていましたが、選手たちが奮起し、目標に向かって妥協することなく成長をとげてここに立つことができました。J1のステージで、感動と勇気と希望を届けられるよう成長して帰ってきたい」

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