11月15日の米中首脳会談は1年ぶりの開催だ。
前回の首脳会談後に中国気球の米領内侵入と米軍による撃墜事件が起きて、米中関係は一気に冷え込んだ。
しかし、ウクライナ戦争は終わる兆しがなく、加えてガザ戦争が起きた。米中間では対立を衝突につなげずに「管理する」観点から、米中の主要閣僚間で対話を続け、ここに至った。
米中関係は対立一色だと言われるが、その実、四つのCで表される関係(安全保障面の対決―Confrontation、政治体制の競争―Competition、経済面の共存―Co-existence、グローバル課題の協力―Cooperation)にある。
時としてこの「4C」のバランスは崩れるが、共通の利益も大きい。決して完全に崩壊するような関係ではない。
本稿を執筆した段階では首脳会談の内容はわからないが、筆者は世界が二つの大きな戦争を抱えている時に、米中間が大きく緊張するような結果にはならないと考えている。
大きく変わった日本の対中戦略
1972年の国交正常化以降、欧米が中国の人権問題に厳しい視線を向けるなか、日本にとって中国は最大のODA(政府開発援助)対象国となり、比較的友好な関係を保ってきた。
しかし、中国が台頭するなかで、中国を脅威と感じる国内世論も高まり、特に安倍晋三政権以降、嫌中・反中感情は強まった。
安倍政権は保守ナショナリズムの傾向が強い政権だった。戦後体制からの脱却を掲げ、中国や韓国などの近隣諸国との関係は悪化した。
安倍政権とその後の政権は一貫して日米関係を強化し、対中けん制を強め、自由で開かれたインド太平洋協力や、QUAD(クアッド、日米豪印)との関係を重視した。
従来のアジア太平洋協力は中国を含む包摂的協力だったが、インド太平洋協力はむしろ中国の「一帯一路」構想を意識した戦略的な構想だ。
背景には中国を脅威とみなす認識が高まったことがある。中国は2010年に日本を追い越し世界第2の経済大国になった。習近平政権のもとで「中国の夢」を掲げ、急速に台頭するとともに、「戦狼外交」と言われる攻撃的な外交を進めた。
南シナ海の軍事化や尖閣諸島への侵入など軍事的脅威も増大の一途だ。また東京電力福島第1原発事故の処理水海洋放出に対して、直ちに日本の水産物輸入禁止措置をとるなど、経済的威圧も常とう手段となった。
…
この記事は有料記事です。
残り1319文字(全文2295文字)
からの記事と詳細 ( 厄介ではあるが隣国の中国 「けん制」だけでいいのか | | 田中均 - 毎日新聞 )
https://ift.tt/7uqQHmD
No comments:
Post a Comment