ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は8月11日、2023年8月11日付政令第11,632号に基づき、新たな経済政策案PAC(Programa de Aceleração do Crescimento:成長加速プログラム)を発表した。この度のPACは、第2期ルーラ政権下で導入された第1次PAC(2007年)や、第1期ルセフ政権下で導入された第2次PAC(2011年)と同様に、インフラ投資によって国内の投資拡大、民間企業の投資拡大、官民連携強化、競争力強化、格差の是正を実現することを目的としたもの。
PACに含まれた投資案件の実施により見込まれる予算総額見込み約1兆7,000億レアル(約51兆円、1レアル=約30円)の内訳は、連邦政府の予算が約3,710億レアル、国有企業が約3,430億レアル、そして、公共事業のコンセッションや官民連携などに参加する民間事業者による投資が約6,120億レアルで最も大きい。中でも今回のPACの特徴として、クリーンエネルギーなど環境問題に取り組む分野が優先的に選ばれた点が挙げられる。
ルーラ大統領は、発表式の演説で「ブラジル経済の成長は健全に戻り、加速していくものとなるだろうが、それだけでは不十分だ。持続可能なものでなければならない」と述べた。また、官民連携の重要性も、新たなPACの特徴として強調されている。ルイ・コスタ官房長官も「新しいPACが以前とは違うのは、国家が官民連携を促進するものとして位置づけられているところだ」と説明した。
具体的な投資案件として、高速道路・鉄道・空港・水路の建設、学校・病院の建設、大衆住宅建設、衛生サービスの拡大、再生可能エネルギーやバイオ燃料の開発などが挙げられる。投資案件の選定には、各州知事も関与した。PACに追加されることによって、インフラ投資の際に必要な各省庁からの許認可や海外からの融資を受ける際の連邦政府の許可が受けやすくなるなどの恩恵があり、サンパウロ州のタルシシオ・フレイタス知事は、サンパウロ市とカンピーナス市を結ぶ鉄道建設案をPACの投資案件に追加するよう働きかけた(注)。
ブラジル全国工業連盟(CNI)のホブソン・アンドラーデ会長は、8月11日付の同連盟公式サイトで「ブラジルのインフラの不十分さに対応するために、新しいPACを通じた投資や官民連携は不可欠だ」と述べ、評価している。
他方、本プログラムの実現可能性への懸念もある。ブラジルを代表するシンクタンク、ジェトゥリオ・バルガス財団(FGV)のラファエル・マルティンス・デ・ソウザ氏は8月12日付現地紙「グローボ」のインタビューで、第1次および第2次PACで完成できなかったプロジェクトも今回のPACにあらためて組み込まれており、「過去にあった問題にどう対応できるかを明確に説明しなければ、プロジェクトが再び失敗するリスクがある」と指摘した。
(注)8月12日付現地紙「グローボ」。
(エルナニ・オダ)
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