自工会・豊田会長あいさつ
昨年、米国、欧州、アジアを訪問する機会がありました。行く先々で感じたことは、「感謝」と「期待」です。
どこの国でも、自動車は基幹産業です。ただ、海外では、日本の自動車産業が現地に根付き、その国や地域の成長に貢献することを「当たり前のことではない」と感じていただいているように思いました。
だからこそ、私たちの存在に感謝し、期待をしてくださる。そして、それこそが、「誰かの役に立ちたい」、「より良い未来をつくりたい」という私たちの原動力になっていると思いました。
これが今の日本にはなくなってきたと感じております。
毎年恒例ですが、年が明けると、春闘の話題が盛り上がってまいります。賃上げの議論では、「単年」の「ベア」ばかりが注目されてまいりますが、本来注目されるべきは、地道に続けている分配の実績だと思っております。
この10年以上、私たちは全産業平均を上回る 2.2%の賃上げを続けております。
雇用を維持するだけではなく、コロナ禍の2年間、22万人の雇用を増やしております。平均年収を500万円と仮定すると、1兆1000億円のお金を家計に回した計算になります。
ただ、ここ日本では、そんな私たちに対して、「ありがとう」という言葉が聞こえてくることは、ほとんどありません。
「当たり前」のことに感謝しあい、頑張っている人をたたえ、応援する。「今日よりも明日を良くする」ために、みんなで必死に働く。その結果、成長し、分配して、「中間層」を増やすことで、私たちは豊かになってまいりました。
日本は、この強みを忘れてしまったのでしょうか? 忘れたなら、思い出せばいい。私はそう思います。
カーボンニュートラルをはじめ、今の私たちが直面する課題は、産業を挙げて、国を挙げて、みんなで一緒に取り組まなければなりません。今まで以上に、「共感」が大事になってまいります。
「共感」という言葉は、「共に」「感謝」すると書きます。「ありがとう」と言い合える関係から生まれてくる「未来への活力」。それが「共感」だと思っております。
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