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Thursday, September 8, 2022

社説:「国葬」の首相説明 理解深められたか疑問|秋田魁新報電子版 - 秋田魁新報電子版

 今月27日に実施の安倍晋三元首相の国葬に関する閉会中審査が国会で行われ、岸田文雄首相が決定の経緯や意義を国会の場で初めて説明した。しかし、「なぜ国葬でなければならないのか」について国民の理解を深められたかどうかは疑問だ。

 審議は衆参両院で各1時間半程度という短時間。岸田首相と松野博一官房長官が説明した後、与野党の質問に答えた。岸田首相はこれまでと同じ説明を繰り返す場面が目立った。その答弁ぶりからは国民の抱く疑問が解消されたとは言い難い。

 岸田首相は安倍氏が亡くなって6日後の7月14日に、国葬の実施を表明。その理由について「在任期間の長さ」「震災復興、経済再生などの功績」「選挙中の蛮行による死去」「国際的な評価」の4点を挙げていた。

 閉会中審査で岸田首相は「国際的な評価」の具体例を新たに示した。参列する予定の海外要人の名前を列挙。260もの国・地域と機関から1700件以上の弔意メッセージが寄せられたと明らかにした。

 野党の質問者からは安倍氏と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係を問題視する声が上がった。自民党が「関係を断つ」としたこの団体と安倍氏の関係を調査すべきだという野党の要求に岸田首相は「本人が亡くなったこの時点では限界がある」と否定的だった。

 安倍氏の功績について「多大だった」と評価する岸田首相と「負の側面もある」とする野党側では全くかみ合わなかった。短時間の質疑では限界があると言わざるを得ない。

 各種世論調査で反対意見が賛成意見を上回る傾向が表れ、いまや国葬実施の賛否は国民を二分している。反対意見では実施の法的根拠の曖昧さ、費用の国費負担、弔意強制の懸念などが主な理由とされている。

 岸田首相は行政権の範囲内で国葬を実施できると主張。法的根拠として内閣府設置法などを挙げた。弔意については「強制することはしない」とした。

 しかし国会に諮って理解を得るやり方をとらず、国葬の会場設営費約2億5千万円に予備費を充てるのは本来の形と言えない。国葬費用に警備費などが含まれないことへ批判が高まってから、概算の警備費や海外要人の接遇費計約14億円を公表した「後手」もいただけない。

 政府は国民一人一人に弔意を示すことは求めないとしているが、7月の安倍氏の家族葬で一部の自治体が学校現場などに半旗掲揚を依頼した。国葬で弔意が強いられる懸念が残る。

 時間不足からか野党の追及も迫力を欠いた。同じ言葉の繰り返しが目立つ首相答弁は「丁寧な説明」には程遠く、説得力を欠いた。「なぜ国葬なのか」という疑問への答えは最後まで見えなかった。これ以上、国民の分断が深まることのないように、政府にはより明確な説明を行う機会を求めたい。

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