先日、ホロライブプロダクションが正式に「切り抜き」に関するガイドラインを策定しました(参考記事)。「切り抜き」とは、YouTuber・VTuberの動画や配信の一部を抜粋して、編集を加えた動画のことです。
これまでホロライブでは切り抜きについて、「同人活動の範囲内」として細かいルールを明確にしていませんでしたが、ガイドライン策定により登録制になり、公式に収益化することが可能となりました。こうした変更について、現役の“切り抜き師”はどのように考えているのか? YouTubeで約20万人の登録者を持ち、ホロライブ好きならば1回は目にしているであろう、あの人気切り抜き師「なめたけ」さんにインタビューしました。
なめたけさんは、驚異のアーカイブ検索力で知られるホロライブの有名切り抜き師の1人。「自宅に身に覚えのない大量の鶏を詰め込まれるぺこら」や「ミオしゃがいつの間にか持ってた謎の『ゴリラタッチ』どこから来たのか調べてみた」など、過去配信のほんの一瞬のシーンまでさかのぼって謎を究明する切り抜き動画を投稿していて、その検索力は、今やホロライブファンから「名探偵」といわれるほどです。
また、大人数コラボや大所帯でのプライベート会の報告など、複数の視点をまとめあげる動画における、編集の丁寧さも定評があります。特に、10人前後のメンバーが参加するAmong Usコラボの切り抜きは圧巻です。
そんななめたけさんは、ホロライブのファンからも「なめたけニキ」と呼ばれ、一目置かれています。Twitterでは、「なめたけニキまとめ早すぎだって……」「なめたけニキのおかげで生き延びれてる感あるな」など称賛する声や、「ホロライブにはなめたけニキって言うアーカイブ検索システムがあります」「時間操作系の能力者なのでは」とその編集力の高さに驚く声が多く寄せられています。
中には「実は公式でしたーって言われても驚かない」という声もありますが、なめたけさんは実際にホロメンに依頼され、何度か公式の切り抜きを担当したこともあります。
そんな、ホロライブ切り抜きの第一人者であるなめたけさんに、切り抜きを始めた背景からガイドライン制定まで、根掘り葉掘りインタビューしました。
―― なぜ切り抜きを始めたのでしょうか?
なめたけさん: 僕が切り抜きを始めたのはホロライブ2期生がデビューした後だったんですが、ずっと「何らかの形で応援してあげたい」と思っていたその頃にVtuberの切り抜きを見つけたんです。どなたの切り抜きだったかは忘れてしまったんですが、それを見て「なるほど」と思い始めたのがきっかけです。それまで動画編集なんかやったことなかったので、字幕もないほんとにただのシーンの切り貼りだけでしたけどね。
―― 現在の切り抜きを見ると、初期と比べても編集やサムネイル、タイトルなどに一層のこだわりを感じます。意識していることはありますか?
なめたけさん: テレビ番組のノリというかテンポ感は影響受けてると思います。特に「水曜どうでしょう」さんとか(笑)。あとは、あくまでホロライブメンバーさんがメインなので、なるべく字幕をかぶせないとか、声を妨げるようなSEはなるべく使わないようにしてます(さくらみこさんのプロレス切り抜きでは使いまくってますが)。サムネとタイトルは分かりやすさを意識してるつもりなんですけど、後から見直してみるとすげーごちゃごちゃしてるなって思うことは多々あります(笑)。編集よりサムネに手こずってますね。
さくらみこさんのプロレス動画の切り抜き。音声素材はいろいろな動画から組み合わせているとのこと。
―― テレビ番組の影響があるとのことですが、参考にしている切り抜き師の方はいますか。また、切り抜き師どうしのつながりはあるのでしょうか?
なめたけさん: 編集が似通ったりしたくないので、他の方の切り抜きは実はほぼ見てないんですよね。そして悲しいことですが僕は関わりはほぼないです(笑)。
―― 確かになめたけさんの動画はオリジナリティーにあふれていますよね。特に、驚くほど細かい場面まで網羅している点は特徴的ですが、どうしてそんなにサーチ力が高いのでしょうか?
なめたけさん: 見た配信は全部記憶してます……って言えたらかっこいいんですけど、とにかく時間を掛けてます。「前回のマイクラ配信はいつで……いつの間にこんなツルハシ持ってたんだ?……」ってシークバーをひたすら動かしてます。それでも分からなければタイムスタンプやTwitterにハッシュタグとワードを打ち込んでリスナーさんに頼ってます(笑)。
―― やはり時間がかかっているのですね。1本の動画の編集には大体どれくらいかかるものなのですか?
なめたけさん: 内容にもよりますが、5分程の切り抜きならざっくり2時間前後、Among Usの視点まとめなどで30分程の長さになると20時間ぐらいになります。バラバラですね。
―― 視点まとめも多く投稿されていてハードだと思いますが、切り抜き活動で特に大変だと感じる点はありますか?
なめたけさん: 編集欲があっても次第に疲れと眠気はくることですね。特に視点まとめを作ってる時は次の日に持ち越したりします。体力つけたい(笑)。
―― では、逆に切り抜き師として一番やりがいを感じたのはどのような瞬間でしょうか?
なめたけさん: やっぱりたまにホロライブメンバーさんに僕の切り抜きの話を取り上げてもらうときとか、一番は動画の制作を依頼されたときですね。直接支援できたことがめちゃくちゃうれしかったです。
ホロライブ2期生紫咲シオンさんのチャンネルに投稿された切り抜きまとめ。これもなめたけさんが編集しています。
―― 公式と言えば、先日ホロライブプロダクションから二次創作ガイドラインが発表され、正式に切り抜きの収益化が認められることになりました。そのことについて、どのように考えていますか?
なめたけさん: 同時に登録制になったことで運営さんは大変だと思いますが、半分管理してくれるような体制になるのは単純に良いことだと思いますし、良い方向に向かうと思っています。ホロライブ全体がプラスの方向になっていけばいいなと。もちろん僕も一層頑張らせていただきます。
―― 最後に、今後はどのように活動していきたいと思われているのかお聞きしたいです。
なめたけさん: 今まで通りですが、何かのきっかけで僕の切り抜きで初めてホロライブを知る人がいたとして、プラスな面で興味を持ってもらえるような、そして新規のファンの方も既存のファンの方も、もちろんホロライブメンバーも楽しめるような切り抜きを作っていきたいと思っています。
なめたけさんの切り抜きはとても丁寧で分かりやすく、ホロライブファンはもちろんのこと、まだホロライブのことをよく知らない人にもおすすめです。今や数も爆増し、激戦区となっている切り抜き界。ガイドライン制定によって、どう変化していくか楽しみですね。
※動画提供:なめたけさん(YouTube/ニコニコ/Twitter)
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