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Friday, June 12, 2020

社説 臨時国会の召集 法的義務は無視できない - 信濃毎日新聞

 憲法53条は、衆参いずれかの4分の1以上の議員が要求すれば、内閣は臨時国会召集を決定しなければならないと定めている。

 この法的な意味合いを明確にして、内閣に厳密な履行を求めた意義ある判決が出た。

 安倍晋三内閣が2017年、臨時国会の召集要求に約3カ月応じなかったのは違憲として、沖縄県選出の野党議員らが国に損害賠償を求めた訴訟だ。

 那覇地裁は「憲法53条に基づく臨時国会の召集は憲法上の義務」と認定。17年の召集要求の放置が違憲だったかどうかの判断は示さなかったものの、「(召集しなければ)違憲と評価される余地はある」と指摘している。

 17年の召集要求は、森友、加計学園問題の真相解明が目的だった。安倍内閣は98日目に召集したものの、会期冒頭に衆議院を解散し、審議は行われなかった。

 要求から召集までの期間は田中角栄内閣以降で最長だ。解散で実質的に100日以上も国会が開かれなかった。二つの学園の問題に注目が集まることを避ける思惑で召集を遅らせたのは明白だ。

 判決は、内閣が召集を履行しなければ「少数派の意見を国会に反映させる趣旨が没却される恐れがある」と強調した。裁判所が内閣に対し、警鐘を鳴らしたと考えるべきである。

 判決は賠償を認めておらず、議員側の敗訴になる。ただし、その理由は、臨時国会が開かれないことによる議員の不利益は国民代表の役割を果たせなくなることであり、「賠償で埋め合わされるものではない」と認定したからだ。

 国は召集について、「高度に政治性のある国家行為」とし、司法審査権は及ばないと主張していた。判決は「召集が合理的な期間内かは裁判所が判断できる」とし、明確に退けた。

 菅義偉官房長官は記者会見で判決について「国の主張が認められた」と述べている。判決を都合よく解釈しているにすぎない。

 国会ではきのう、過去最大の10兆円の予備費を含む第2次補正予算が成立した。与党は会期末の17日に国会を閉じる構えだ。これでは国会が国の財政をチェックできなくなる。

 野党は閉幕した場合は、憲法53条に基づき臨時国会の召集を求める考えだ。安倍首相は衆院予算委員会で、要求されても召集するかどうか明言を避けた。

 召集しないのは憲法をないがしろにする行為だ。判決を重く受け止めることを内閣に求める。

(6月13日)

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