安倍首相「緊急事態宣言」をする意向
安倍首相が緊急事態宣言を出す意向を固めた。
文字通り、すでに緊急事態であり、いまのタイミングまでずれ込んだことは理解に苦しむ。
緊急事態宣言のなかで大事な点は、海外のように外出自粛に罰則はないため、仕事にも行けること。
端的に言えば、今までと大きな違いはなく、また人々の心に訴えかける「お願い」を強くしたものということだ。
人々の行動をこれでは抑え込むことは難しいだろう。
相変わらずの「補償なき緊急事態宣言」では市民は働きに出るしかない
まず不要不急の外出は控えてほしいことは言うまでもないが、外出をしなければならない人々が大勢いる。
なぜかと言えば、ワーキングプア、低所得階層が増え続けてきたからだ。
2010年代における貧困層の拡大は、実はかなり顕著であり、休業補償などが不足すれば、預貯金や蓄えがすぐに底をつく世帯が膨大に形成された。
例えば、実質賃金は上がるどころか、近年は低下傾向が続いている。
また、その一方で、国民負担率(税金・社会保険料など)の上昇も見られる。
2010年度の国民負担率は37.2%だったが、2018年度は44.1%まで引き上がっている。
働いても働いても、税や保険料が上がる一方で、手取り収入が上がらないのである。
企業に勤めている方は少し前の給与明細と今のものを見比べてみてほしい。
天引きされている金額の多さに驚くはずである。
だからこそ、可処分所得の低下も止まらない。
特に低所得層は以前より、さらに低所得に陥っている。
例えば、所得が最も少ない下位10%(第1十分位)の可処分所得が、1997年を100とすると、2015年には77.7%まで下がっている。
都留文科大学の後藤道夫名誉教授によれば、生活保護基準以下の貧困層(2012)は、すでに約3000万人にも及ぶが、生活保護制度では約210万人を捕捉する程度である。
つまり、いくら外出するな、と叫び続けても、政策の不備によって拡大したワーキングプアは問答無用で働きに出ていくだろう。
そうしなければ、暮らしていけないのだから。
これらの人々は、新型コロナウイルスの感染リスクだけでなく、収入が途絶えて食えなくなるリスクと平常時から隣り合わせで暮らしている。
政府がここに手当を怠ってきて、今更、外出自粛を呼びかけて応じるはずもないだろう。
もちろん、ワーキングプア層の労働現場は、テレワークが難しく、出勤しなければならないところばかりである。
テレワークなどインターネット環境整備もされていない。日本はすでにIT後進国なのだから当然である。
いくらテレワークを推奨しても、現状では自宅で仕事ができる労働者は限られている。
先日のLINE利用者を介した厚生労働省調査でさえ「仕事はテレワークにしている」は、5.6%にとどまっており、いかに外出規制が困難か理解できるはずだ。
要するに、緊急事態宣言を出しても十分な補償をしないことが続けば、貧困が今よりも深刻化することは容易に想像がつく。
生活困窮によって、今でも外出しなければいけない人々が大勢いるように、今後も外に出て働かざるをえない。
外出自粛を我慢できる人、自宅勤務ができる人からすれば「なぜ外出自粛しないのか」と、不用意なバッシングが強まることが懸念される。
また不毛な分断や差別が起こることがないようにしなければならない。
強調しておきたいことは、いくら緊急事態宣言が出されようが、外出しなければ生活破綻する労働者が大勢いる。
これまでの労働政策や社会保障政策が決定的に不足していたことによるものだ。政府の無策は緊急時に「見える化」する。
早急に議論してほしいのは、緊急事態宣言後の現金や現物のサービス給付、休業補償や生活保障である。
これについて、今のところ、不明瞭である。というよりも、構想されていないのではないだろうか。
自粛要請をして仕事をしたことにせず、その先が重要なのである。
人々が安心して外出をしなくてもすむように、自粛要請ばかり繰り返さず、実効性ある補償をしてほしい。
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April 06, 2020 at 10:17AM
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安倍総理大臣 みんな「緊急事態宣言」を出されても補償がなければ外出して働くしかないのです(藤田孝典) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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