義務を果たさないものに権利はない――。
もっともらしく見えますが、本当なのか。人権は国が与えるものなのか。哲学者で早稲田大学教授の森岡正博さんと考えました。【聞き手・須藤孝】
◇ ◇ ◇
――人権は恩恵なのでしょうか。
森岡氏 私の授業を受ける前ですが、学生が「権利は義務を果たして初めて与えられる。義務を果たさない人に権利はない」と言うことがあります。
多数というわけではありませんが、毎年のようにいます。
雑な言い方です。もっと厳密に、物事を分けて、考える必要があります。
生存権から考えよう
――どのように考えればいいですか。
◆基本的人権は、社会でみなが幸せに生きていくための考え方です。そのうえで、基本的人権のなかでも生存権とそのほかの権利を分けて考えたいと思います。
たとえば刑を受けて自由を奪われることはありますが、刑期が終われば解除されます。しかし、生存権は一度失われたら終わりです。
学生には、義務を果たさないと生存権もないのか、と問いかけます。赤ちゃんはなにも義務を果たしていません。たいていの学生はそこで間違いに気がつきます。
人権は国が与えるものか
――人権は国が与えるものという考え方もあります。
◆「国がなければ人権は守られないのだから、国こそが一番大事だ」という言い方があります。これも雑な考え方です。
…
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