廃業の危機に直面する現場農家に、「輸出の強化等による稼ぐ力をしっかり伸ばしていかなければならない」と述べる政府の感覚が問われる。
JAcomは10月11日掲載の記事(下記注)で、次のように報じた。
岸田首相は10月10日、鹿児島県を訪れ、「車座対話において飼料価格の高騰や子牛価格の下落等によって和牛に関わっている皆様方が大きな影響を受けているということを改めて感じ、飼料の国産化や堆肥の利用拡大など、生産基盤を強化しなければならないということ、また輸出の強化等による稼ぐ力をしっかり伸ばしていかなければならないことを改めて再認識した」と述べた。
そのうえで今月中に策定する総合経済対策の中に、稲作農家と畜産農家が連携した国産飼料の供給・利用拡大に向けた取り組みに対する新たな支援制度を創設することや、畜産農家、肥料メーカー、子牛農家が連携して、堆肥等の肥料利用を拡大する取り組みに対する新たな支援制度の創設、さらに牛肉を輸出するための高度な衛生管理施設整備への支援を拡充することを盛り込む方針を示した、そのうえで「こうしたことを盛り込んだうえで、肥料・飼料の国産化や円安メリットをいかした農林水産物の輸出拡大などに強力に取り組んでいきたい」と述べた。(以上、引用)
肉牛、養豚には、通称「マルキン」という赤字補填の仕組みがあり、酪農よりは制度的に恵まれていると言われるが、赤字補填の基金への農家負担も1/4あるため、農家への補填金額が増えるにつれて農家拠出金も増えるので、今は、拠出金と補填金額があまり変わらない事態になってしまっているという嘆きが肥育農家から聞こえてきている。
こうして、資金繰りができなくなって廃業寸前に追い込まれている農家に今必要なのは、飼料国産化の支援の前に、緊急の赤字補填、無利子・無担保融資の拡充などであることは、疑いの余地がない。しかも、なぜ輸出振興が出てくるのか。この期に及んで、まだ何も現場の実態が認識できないのだろうか。理解に苦しむ。
(注)
からの記事と詳細 ( 【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】どうして現場の苦悩がわからないのか - 農業協同組合新聞 )
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