世界保健機関(WHO)が、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を宣言して1年が経過した。この間、感染者は世界人口の64人に1人の割合にまで拡大し、いまだ収束を見通せていない。国際社会は一致協力し、早期のウイルス封じ込めに全力を挙げなければならない。
感染者数は現在1億2千万人近くに上り、死者は260万人を超えた。死者5千万人以上ともされたスペイン風邪以来、約100年ぶりの人類的な災厄となった。
しかし、これまでの世界的な対処が、全くの失敗だったとまでは言えまい。
感染拡大とともに、ウイルスの特性などの情報が世界中で共有され、共通の対策に結び付いた。各国は移動など人々の社会・経済活動をある程度制限。ソーシャルディスタンスの確保、マスクの着用、手洗いなどを推奨した。世界的な公衆衛生意識の高まりの副産物として、季節性インフルエンザの患者も激減。当初、何年先になるか分からないとされたワクチンも、1年を待たずに開発され、世界中での投与が始まった。
一方で、発生初期には中国の「情報隠し」が疑われ、WHOの初動対応の遅れも指摘された。
中国が武漢での「原因不明の肺炎発生」を公式報告したのは2019年12月31日。1カ月後、WHOは「緊急事態宣言」を出した。この時点での感染者は世界で7818人で、封じ込めは十分可能と見込まれていた。
だが各国の反応は鈍く、感染は急拡大。WHOがパンデミックの声明に踏み切ったのは、ようやく昨年3月11日になってからだった。情報提供を求める権限の弱さや、中国への配慮が判断の遅れを招いた、との見方もある。
世界的感染に歯止めがかからない中、米国やブラジルでは政治指導者が事態を軽視し、被害を拡大させたと批判された。米トランプ前大統領は当初マスクの着用を否定。感染者は2900万人を超え世界最多となり、昨年の大統領選での政権交代にも影響した。
感染をきっかけに人種差別や患者差別も表面化。マスクや医療物資が不足し、国同士の摩擦を引き起こした。現在のワクチン供給を巡っても、国際的な争奪や外交利用の懸念が高まっている。
自国優先でワクチンなどを確保しても、他国で感染拡大を許してしまえば安全は得られない。特に経済力の弱い途上国を置き去りにしては、危機からの脱出は不可能だ。そのためにもワクチン供給の国際的枠組み「COVAX(コバックス)」を重視し、支援を厚くしていくべきだ。同時に各国足並みをそろえ、変異ウイルスへの警戒を強めなければならない。
新たな感染症に対抗していくためにも、国際的な公衆衛生体制をより高める必要がある。WHOの権限強化や運営資金充実がまず考えられる方策だろう。欧州連合などからは、感染症情報共有のための新たな国際条約づくりも提案されており、検討を急ぐべきだ。
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