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Tuesday, April 19, 2022

「メール誤送信ゼロ」を実現した、ごく簡単な習慣 - 日経ビジネスオンライン

 ビジネスの現場でどのようにミスを無くす仕組みが活用されているのか。具体的方法と成果を製造現場、オフィスワークなど4つの事例で解説。行動科学マネジメントの第一人者・石田淳氏の著書『無くならないミスの無くし方』(日本経済新聞出版)から一部抜粋してお届けする。

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ケース1:ケガが多発の工場

 ある繊維会社の製造工場での作業の例です。
 工場では、大きな歯車に繊維を通して製品をつくる作業が行われていました。歯車に糸が巻き付き、それを次の歯車に流していくという作業です。

 その際、歯車にはごく微量の糸くずがどうしても付着してしまいます。作業を何千回、何万回と繰り返していくうちに、歯車には糸くずが溜まり、回転速度が遅くなってしまうというトラブルが発生することもあります。

 自動的に機械が歯車の糸くずを除去するシステムであればいいのですが、設備が最新化されていなかったこともあり、糸くずの除去には人の手が必要とされていました。
 作業員がわざわざカッターのような小さな刃物を手に持ち、糸くずをカットしなければならないのです。

 その際に、しばしば起こるのが「作業員がカッターで自分の指を傷つけてしまう」という事故でした。

 本来ならば、新たな機械を導入して自動化を図ることが望ましいのでしょうが、それには莫大な経費と時間がかかります。
 現状の設備のままで、まずは指を傷つける事故を無くすことが求められました。
 そのためには、どうすればよいか?

 答えは「刃が多少触れても傷がつかないような、頑丈な手袋をはめる」です。

 しかし、ここで人間の行動原理が働きます。

[人間の行動原理]
人間は「結果にメリットのある行動」を選択する。

 連載の第1回で説明したこの行動原理があるから、人間は「面倒を避ける」「ラクを選ぶ」といった理由で行動し、ミスや事故を招くのです。

「手袋をはめる」という行為は働く側にとって「面倒」なこと。
 そこでマネジメント側としては、まずはこの面倒の解消を考えました。

用具をセットで配置し「面倒」を解消

 具体的には、カッターと手袋は配置場所を離さず、1セットとなるように用意し、同時に手に取らせます。
「手袋はしなくてもいいか」ということがないようにしたわけです。

 さらにチェックリストを用意し、チェックした従業員にOKを出すことで、従業員の行動を「承認」しました。

 こうして「手袋をはめる」という安全行動は現場での習慣となり、事故率もゼロに近いものになったのです。

「行動のハードルを低くする」「行動を承認する」。現場で働く人の行動そのものを見直し、これらを実践する工夫を施すことで、ミスや事故は無くなるのです。

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