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Sunday, September 3, 2023

AIを使いこなした上で独自の強みがある人材が求められる――オルツ ... - 日経BP

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 AIの研究開発をするベンチャー企業オルツは、2023年2月に独自のLLM「LHTM-2」を発表した。同社はAIを活用した個人のデジタルクローンによって人を労働から解放し、より高次の活動に集中できる世界の実現を目指している。西川仁氏は東京工業大学情報理工学院で教壇に立った経験があり、現在は同社CTOとして研究開発を主導する。

──何でも答えてくれるAIがあったら、学生・社会人を問わず、学びに対するモチベーションが失われませんか。

 もし、ある人が機械より優れた仕事ができないのであれば、機械に負けることを認めるべきだと思います。だから、機械と差別化するためには、これまで以上に勉強する必要があります。機械のことも知っておかなければならないし、一定の高等教育を受けておかなければなりません。

 言語モデルがさまざまな質問に答えてくれても、発明のようなことはまだできないので、そこに人間としてリソースを割く必要があります。そのためには当然勉強が必要ですが、既に優れたAIが使えると考えてしまうと、勉強する気がそがれるのは事実だと思います。個人的にも、そこにはジレンマがあると感じていますし、コアな問題だと思っています。

──機械の方が速く正確にできることを、人が苦労して学んだり身に付けたりする必要がありますか。

 確かに、四則演算でさえ実際に使う機会は少ないですね。レジで対応する店員さんもバーコードを読み取っているだけです。お客の方もキャッシュレスで支払えば、そこに計算という作業は一切発生していません。

 この上に自然言語のインタフェースが乗ると、単なる計算ではなく、例えば「A君はリンゴを何個買ってBさんに…」といった算数の文章問題をAIが読んで答えを出せるようになります。だからと言って、その裏側のロジックを知らなくてもいいのかというと、私は懐疑的です。

 人間が機械に頼り過ぎるというのは難しい問題で、社会階層の分化がさらに激化するかもしれません。つまり、「機械を使うのもいいけれど、頼りっぱなしではダメだ」という風な文化資本を持っている家庭とそうでない家庭とで、根本的な考える力の差が出現してくるかもしれません。

──では、AIが当たり前に使われる時代には、どんな人材が求められますか。

 今後、大企業や教育現場では、言語モデル(AI)を読み書きと同じレベルで使わなければならないと思います。機械に任せられるところは任せて、それより高次の仕事で価値を生み出せる人。AIをうまく使いこなした上で、さらに独自の強みがある人が求められるでしょう。

 これはAIの時代だからということではなく、これまでも時代を問わず変わっていないことです。その時代における最新技術を十分に使いこなし、その人独自のバリューを出せる人が求められてきました。その技術がAIになったとしても変わりません。効率の良い道具を使った人の方が勝つのです。

 これまでは、コンピューターとコミュニケーションができるプログラマーやエンジニアが重宝されてきました。これからはAIを使いこなせる人や、AIと人間の間をつなぐブリッジ役になる人が重視されるでしょう。このような「大多数の人はアクセスできない領域」というものは常に世の中に存在するので、そこに対してアクセス可能な人材に対する需要は変わらないと思われます。

初出:2023年7月18日発行「日経パソコン 教育とICT No.25」

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