Selasar Tari: カーボンオフセットの課題は永久債の活用によって克服できる 1000 ...

Illustration: Edmon de Haro; Baloncici/Getty Images (chimney); Vitalina/Getty Images (butterflies)

サマリー：カーボンオフセットは、大気中の二酸化炭素（CO2）の長期的な除去に効果があり、企業のネットゼロ目標の達成に役立つ。しかし、大規模植林を筆頭とした自然由来のオフセットでは一時的な解決にとどまる。その寿命は...　もっと見る一般的に100年未満であり、本来は1000年先を見越した対応をしなければならない。そこで、筆者が提案するのが永久債の利用とその取引市場の活性化である。　閉じる

カーボンオフセットに潜む期間の問題

　2015年9月、イェール大学バイネッキ貴重書・手稿図書館の学芸員は、アムステルダムを訪れ、1648年5月15日に発行された債券の過去12年分の利息を回収した。債券発行の際、借り手であるオランダ水道当局は、保有者に「永続的に」利息を支払うことを約束していた。債券の売却で得た現金は、海面上昇を防ぐインフラプロジェクトの支払いに充てられた。

　このような永久債は、大気中の二酸化炭素（CO2）を除去し、無期限に貯蔵する炭素除去プロジェクトの資金調達を可能にするため、今日の気候変動との戦いにおいて有用であると証明されるかもしれない。この炭素除去は、炭素排出負債またはE負債の相殺（オフセット）に使うことができるため、企業などの組織がネットゼロという目標を達成するのに役立つ。また、永久債によって、炭素除去オフセット取引における効率的な「スポット市場」が発展し、その生産と利用の両方が促進される。

　永久債は、多くのカーボンオフセットの期間と、それらが相殺する排出負債（E負債）の期間に潜む重大なミスマッチを解消するのに役立つ。2023年7月-8月号の『ハーバード・ビジネス・レビュー』の論文“Accounting for Carbon Offsets”（未訳）で筆者らが指摘したように、今日排出される温室効果ガスは、一般的な金融負債よりもはるかに長い1000年以上も大気中に残留すると予想される。このため、温室効果ガス排出から生じるE負債は、金融市場における特別な課題である。なぜなら、オフセット可能な炭素排出資産（E資産）もまた、その期間が無期限でなければならないからだ。

　地下鉱物化による炭素の回収・貯留のようなE資産は、この基準を明確に満たしているものの、そのようなE資産は現在、ほとんど存在しない。それよりも今日広く普及しているのは、原生林再生プログラムのような自然由来のオフセット（NBO: nature-based offsets）である。こうしたプログラムは通常、森林が「有限の」（補充されない）寿命であるために、期間が比較的短く、100年未満の可能性もある。

　問題は、NBOがE負債の相殺に使用できるかどうかであり、もしその利用ができなければ、今日供給されている炭素除去オフセットのほとんどは、長期的な排出負債に対する頭金にすぎないことになる。

　NBOが無期限であるためには、その提供者は、原資産（森林）を永続的に管理することを約束しなければならない。森林を構成する樹木が自然に朽ち果てたり、病気や火災などで破壊されたりした場合に、植え替えなければならないということだ。その資金を調達するために、オフセットプロバイダーは、土地を購入し、樹木を植えるだけでなく、予見可能な資金を永続的に提供するための資本を必要とする。

　言い換えれば、彼らが調達した資金の一部を基金に投資し、その収益を森林の管理資金に充てることで、炭素が無期限に隔離される。無期限とは、1000年などと定義され、今日排出された炭素が大気中に留まる期間として科学的に合理的な推定値である。