円安が進む状況下、キヤノンの御手洗冨士夫会長が生産拠点の国内回帰について言及した。その真意はなにか。
長期にわたりキヤノンを率いてきた御手洗冨士夫会長は「円高の時代はまた来る」と語る(撮影:尾形文繁)
20~30年ぶりの水準となった円安は、グローバルに展開する企業にとって業績の追い風となっている。海外売り上げ比率が約8割のキヤノンも例外ではない。
10月26日に発表した2022年1~9月期決算では、今期3度目となる通期営業利益見通しの上方修正を行った。2022年12月期の営業利益は3850億円と前期比36.6%の増益を計画する。円安効果は増益要因としてもっとも大きく、968億円となる見込みだ。
一方、好決算とともに注目されたのが、御手洗冨士夫会長兼社長CEO(最高経営責任者)の発言だ。「経済的、地政学的なリスクを回避できる国に生産拠点を移すか、生産を合理化し日本国内に回帰させる二択しかない」と、決算会見で考えを述べた。
多くのメディアは台湾有事など地政学的リスクを強調して、この発言を取り上げた。だが、御手洗会長を直撃すると、その真意はほかにあった。
――今年初めに1ドル=110円台だった円は、10月下旬に150円台となるほどに急変動しました。この20~30年ぶりの円安水準をどうみていますか。
変動相場制になってから(為替レートが)動くのをずっと経験してきたから、ある意味慣れっこになっている。私が駐在員としてアメリカにいた1966年には1ドル=360円だった。
それが1971年のニクソンショックを機に300円を下回り、1989年に日本に帰ってきたときは120円くらいにまで下がっていた。1995年の社長就任直後は、(社長就任への)ご挨拶というわけではないだろうが、100円前後に円高が進んでいた。経費削減を死ぬ気でやったことをおぼえている。
キヤノンにとって円安は、日本から輸出する分にはメリット。でも、海外から輸入するものについてはコストが高くなる。連結決算をする際は、海外の子会社の経費が円換算すると上がる。円安のほうがプラス面は多いが、100%まるきりいいというわけではない。
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