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Wednesday, August 17, 2022

「英政府のために働かなければよかった」 アフガニスタンに置き去りにされた請負労働者たち - BBCニュース

ヨギータ・リマイエ、BBCニュース(アフガニスタン・カブール)

Anonymous woman

画像提供, BBC

アマールさんは何の変哲もない白いビニール袋の中に、自分にとっていま最も大切な所持品の1つである紙の束を入れて持ち歩いてた。

私たちが彼の家を訪ねて人目を引いてしまわないよう、アマールさんはバイクに乗って安全な場所にいる私たちに会いに来た。タリバンの検問所で身体検査され、書類が見つかってしまうかもしれないとおびえながら。

書類の中には、ブリティッシュ・カウンシル(英国文化振興会)と交わした2年間の教師としての契約書や、そのほかのイギリスとの関係を証明するものが含まれていた。アマールさんはこれらの書類が自分と家族の安全を確保するのに役立つことを願っている。彼は英政府とつながりのある仕事をしていたことから、命の危険を感じている。

「私たちはアフガニスタンでイギリス文化やその価値観を教えていました。英語という言語だけでなく、平等や多様性、包括性についても教えました。彼ら(タリバン)の信念によれば、それはイスラム教には当てはまらず、違法とされています。だから私たちのことを、罰せられなければならない犯罪者だと考えています。それで私たちは脅威を感じているんです」と、アマールさんは話した。

アマールさんは以前タリバンに拘束されたことがあり、自分の仕事が家族をも危険にさらしていることを恐れている。

「(タリバンは)私を警察署に連れて行って、外国政府のために働いているかどうか聞いてきた。幸い、自宅や携帯電話からは何の証拠も見つからなかった」

「でも、これで終わりだとは思いません。彼らは私に目をつけています」

アマールさんは、アフガニスタンに取り残された、ブリティッシュ・カウンシルで公的な仕事に従事していた100人以上の教師のうちの1人。その多くは女性だ。

教師は「挑戦的な仕事だった」

ノーリアさんも、英語教育プログラムの一員だった。

「私たちにとって挑戦的な仕事でした。過激思想を持つ人もいて、私たちが教えていることは容認できないとよく言われました。どこに行っても私たちは英政府の代表として見られていました」

「私たちをイギリスのスパイだと思っている人もいた」ため、タリバン支配下にあるアフガニスタンでは自分や家族は危険にさらされていると、ノーリアさんは話した。

Taliban fighters patrol the streets in Kabul on the anniversary of the fall of Afghanistan to the Taliban

画像提供, Getty Images

タリバンは昨年8月の復権後、前政権とその同盟国のために働いた全ての人に恩赦を与えるとしていたが、報復殺人を行っている証拠が次々浮上している。国連は160件もの事例を記録している。

ノーリアさんはタリバンが政権を奪取して以来、身を隠している。

「本当にストレスがたまるし、囚人生活よりひどいです。自由に歩き回ることもできません。外に出るときは外見を変えるようにしています。精神的にも参っています。もうこの世の終わりだと思うこともあります」

「置き去りにされた」

ブリティッシュ・カウンシルはスタッフ差別をしていると、ノーリアさんは非難する。

「オフィスで働いていた人たちは別の場所へ移したのに、私たちのことは置き去りにしました。(英政府による)『アフガニスタン人移住・支援政策(ARAP)』が発表されたときも私たちにはそのことを教えてくれなかった」

ノーリアさんやほかの教師たちは現在、「アフガニスタン市民再定住スキーム(ACRS)」というイギリスの別の制度を通じて移住を申請している。しかし、現時点では照会番号を受け取っただけだという。

ブリティッシュ・カウンシル側は、ARAPを開始した当初、英政府は同機関のオフィススタッフを含む従業員のみを考慮し、教師やほかの請負労働者については含まれていなかったとしている。

また、同機関はARAPを進展させるよう英政府に働きかけてきたという。

英外務省は、ブリティッシュ・カウンシルの請負労働者はACRSを通じた移転の対象であり、申請を迅速に処理しようとしているとしている。ただ、どれほどの時間を要するかについては回答していない。

「彼ら(英政府)は請負労働者が死亡した場合にのみ、速やかな対応を取るかもしれないと思っています。そうなれば、彼らは自分たちが危険にさらされているのだと感じるかもしれない。今すぐ何かしようと。遅かれ早かれこのような事態は起きるでしょう」と、アマールさんは話した。

教師の中にはタリバンに迫害されてきた少数民族ハザラ出身者もおり、武装勢力「イスラム国(IS)」系の地元組織「イスラム国ホラサン州(ISKP)」から繰り返し攻撃を受けている。カブールのハザラ人が多く暮らす複数の地域ではこの10日間だけで3件の爆発が起きている。

しかし、英政府のそれ以外の役割を担っていた人々にとっては、安全な場所への道筋はさらに不確かなものとなっている。

タリバン政権から召喚状も

ジャファールさんは、アフガニスタン国内で英政府が支援する開発プロジェクトを円滑に実施するため、上級顧問として働いていた。

英政府が設立したり、契約を結んだりした企業に直接雇用されていたほか、米軍基地など、米政府の同様の仕事にも就いていたという。

ジャファールさんは2021年以前にもタリバンから脅迫を受けていたという。当時、アフガニスタンの著名な市民社会メンバーを標的とした、タリバンによる殺害行為が相次いでいた。

これまでに受けた脅迫文の1つを、ジャファールさんは私たちに見せてくれた。ジャファールさんを外国政府のスパイだと非難し、「イスラムの信仰を裏切った」として殺害をちらつかせる内容だった。

昨年8月以降、ジャファールさんは7回も居場所を変えているという。

今年初めにジャファールさんの実家に届いたという、タリバン政権の内務省からの召喚状も見せてくれた。このような書簡を3回も受け取ったという。

「ストレスとショックで入院したこともあります。眠れなくて。医者から強い薬を処方してもらっていますが、それもあまり効きません。妻もうつ病で苦しんでいます。子どもたちは学校に行かせていません。(タリバンが)子どもたちに気付くかもしれないと思うと怖くて」

移民ビザは取得できず

ジャファールさんはアメリカの特別移民ビザ(SIV)を申請したが、却下された。上司が新型コロナウイルスに感染して亡くなり、推薦状がもらえなかったためだ。

タリバンがアフガニスタンを予想外の速さで占領し、混乱した状況の中で避難生活を送っていたジャファールさんは、英当局者から空港に呼び出されたことがあった。幼い子どもと妻を連れて、空港の外のバスの中で6時間も座っていたという。

「息子は体調を崩していましたが、外にいる人たちが必死にバスの中へ入ろうとしてきたので、バスの窓を開けることもできませんでした。タリバンが空に向かって発砲していて、それを見た息子は心に傷を負ってしまいました」

From August 2021 - Hundreds make their way to the Kabul airport to be evacuated

画像提供, Getty Images

それは、カブール国際空港周辺で起きた自爆テロで180人以上が死亡した日だった。

イギリスの地上での退避手続きは終了し、ジャファールさん一家は逃れられなかった。

それ以来、申請したARAPの手続き番号を受け取ったこと以外に進展はない。

「私は彼ら(イギリス)と一緒に仕事をしました。彼らの手助けをしました。現場にいた私たちアフガニスタン人は、彼ら(外国人)を嫌ってなどいませんでした。私たちがプロジェクトの実施を認めるようみんなを説得していたからです。私たちは脅威と向き合ってきたのに、いまではこんな風に取り残されている。この世界には、私が安心と尊厳を持って暮らせる場所なんてない」と、ジャファールさんは声を震わせながら話した。

「私の子どもたちの未来はどうなるのでしょうか。娘は勉強できずにいます。彼女には大きな夢があったのに。幼い息子たちは過激派になってしまうのでしょうか。この子たちをどうしてこの世に送り出してしまったのだろうと、問い続けています。こんな未来が待っているのなら、子どもたちは生きているべきではないかもしれない」

自分の命をかけた相手に「裏切られた」

私たちは英軍と共に前線へ行った戦闘通訳など、英政府と働いていた3人に話を聞いた。彼らは皆、自分たちの命をかけた相手に裏切られた感覚だと口にした。

A British soldier meets Afghans

画像提供, Getty Images

英政府は昨年8月に1万5000人をアフガニスタンから退避させ、その後も5000人を退避させた。

しかし、いまも数千人もの人が恐怖の中で日々を過ごし、行き詰まった状態で待ち続けている。メールの受信ボックスに一筋の望みが届くことを願いながら。

「以前は英政府のために働くことを誇りに思っていました」と、ノーリアさんは言った。

「でも、いまは後悔しています。彼らは私たちの人生や仕事を重んじることなく、残酷にも私たちを置き去りにしているのですから」

記事中に登場する取材対象者の名前は、身元を保護するため仮名を使用しています。

カブールでの追加取材:イモーゲン・アンダーソン、サンジェイ・ガングリー

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