Pages

Wednesday, April 27, 2022

“共感”で通じると思ってはいけない - ITpro

全2612文字

 今回は文章を分かりやすくするうえで欠かせない補足説明や具体化に必要な素材集めについて解説したい。文章を書く際に忘れてならないのは、読み手が自分と全く同じ知識や感覚を持っているわけではないという点だ。自分の中で当たり前の情報でも、読み手にはそのように映らないケースは決して少なくない。

 はやりの“共感”で分かってもらおうと甘えてはいけないのだ。これは今回解説する素材集めだけでなく、文や文章を構築する場面でも同じ考えが出てくる。よく覚えておいてほしい。

 文章を書く際には、伝える相手がどのような知識を持っているのかを考えなければならない。その道の第一人者が専門的な内容を解説するために執筆した文章には大抵、一読しただけでは理解し難い部分が存在する。分かりやすい文章を作成するためには、書き手と読み手の知識などの差を埋めるための素材集めを意識しなければならない。

 理科系の人材が関わる機会の多い技術的な話題であれば、専門性が高くなるほど内容の通じる相手は減る。新しい商材やビジネスを営業するような場面であれば、相手がその内容を知らない前提で臨む必要があるだろう。ここでは、「自動車メーカーのX社による全固体電池の開発」という主題に関して補足説明するための素材集めを例に挙げていく。

<主題>

  • 自動車メーカーのX社は電気自動車向けのバッテリーとして、全固体電池の開発を進めている(誰が何をする)

<目標>

  • 自社開発の全固体電池で、電気自動車の航続距離を延ばす(目標は何か)
  • 2030年ごろに実用化する(いつ何をする)

<理由・背景>

  • 液系リチウムイオン電池は、ガソリンに比べてエネルギー密度が小さい(なぜ開発するのか)
  • 液系リチウムイオン電池には液漏れや発火のリスクがある(なぜ開発するのか)

 電気自動車や電池の開発に携わっている人であれば、これだけの情報でも概要は十分に理解できるだろう。しかし、自動車関係の仕事に就いていても、この分野に詳しくない人は存在する。この材料だけでは、内容を十分に分かってもらえない恐れがある。

 こうした問題を解決するうえで必要な情報は2つある。1つは専門用語や込み入った内容をかみ砕いた情報だ。ほんの少し詳しく説明したり、やさしい言葉に置き換えたりするだけで、内容が格段に伝わりやすくなるケースは少なくない。

 数学における図形の証明問題で、補助線を引いて情報を引き出すケースがある。専門性の高い用語や文章を分かりやすくするための素材は、まさに自ら補助線を引いて導き出す情報のようなものだ。

 伝える相手の多くが全固体電池について詳しくないと考えられるのであれば、全固体電池を補足説明するための素材を用意する。とはいえ、補足説明は増やし始めるときりがない。説明すべき本題よりも多くなり過ぎると、本題がうまく伝わらなくなる恐れがある。読み手の知識や関心をよく考えて、本当に不可欠な素材を集めるようにする。

<全固体電池の説明>

  • 既存の電気自動車では液系リチウムイオン電池が使われている
  • 液系の電池は電解液の中に正極と負極があり、その間をセパレーターで隔てている。
  • 全固体電池には電池の正極と負極の間に電解液がない
  • 全固体電池では液漏れ対策が不要になり、形状の自由度が増す
  • 全固体電池は小さな電池を組み合わせるような多層化が可能で、大容量でも急速充電できる

 ここでは、一般的な電池の構造や電池のパーツ名などを読み手がある程度、理解しているという前提で、補足説明の素材を集めた。想定される読者が、こうした情報に詳しくないと判断される場合には、もう少し説明を足していく。

 こうした情報の追加によって、全固体電池はぐっとイメージしやすい存在に変わるはずだ。では、専門的な情報を分かりやすく伝えるうえで欠かせないもう1つの情報は何だろうか。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( “共感”で通じると思ってはいけない - ITpro )
https://ift.tt/1C3rtlW

No comments:

Post a Comment