韓国銀行(中央銀行)は4月21日、李昌ヨン(イ・チャンヨン)新総裁の就任式のあいさつを公表した。同氏は、韓国経済の行方を短期的な視点と長期的な視点に分けて説明した。短期的な視点では、ロシアによるウクライナ侵攻やオミクロン株の影響など、長期的な視点では、デジタル・トランスフォーメーションや高齢化の影響などについて、語った。また、韓国経済が直面する課題の解決策としては、金融政策だけではなく、財政政策と構造改革が伴わなければならない点などを強調した。その概要を以下に紹介する。
1.経済見通し
短期的には、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、予想を上回るペースで進む米国連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の正常化、オミクロン株の拡大にともなう中国の景気鈍化の可能性などにより、金融政策は難しさが増している。インフレ圧力が一段と高まる中、景気回復の勢いは従来の見通しより弱まることが予想される。成長と物価の間の相反(トレードオフ)関係が金融政策の運営をさらに制約しており、バランスを取りつつ政策運営していかなけなければならない。
長期的には、加速するデジタル・トランスフォーメーションに加え、グローバル化の後退の流れがポストコロナのニューノーマルとなる可能性が高まっている。新技術確保の競争、地政学的な経済のブロック化など、国・地域間の対立が深まり、国際情勢は複雑さが一段と増している。対外経済依存度の高い韓国経済がこうしたニューノーマルへの転換の過程で挑戦を乗り越え、一段と飛躍することができるか、あるいは高齢化と生産性の低下傾向が続き、長期停滞(Secular Stagnation)局面に陥ってしまうかは予測が難しい。韓国経済は大転換の岐路に立っている。
2.課題解決
韓国経済が直面する課題に対処するためには、金融政策だけではなく、財政政策と構造改革が伴わなければならない。韓国銀行も、通貨・金融政策にとどまらず、直面する問題を精査し、韓国経済が進むべき正しい方向性について解決策を提示していかなければならない。
さらに、国内の課題に偏るあまり、国際社会の変化の大きな流れを見逃してはいけない。韓国銀行も他の中央銀行と同様に、デジタル経済、グリーン金融など、新たなグローバル課題を抱えている。中央銀行デジタル通貨(CBDC)では、それに関わる環境変化が決済インフラと金融政策の有効性に大きな影響を与えるだけに、われわれの生存がかかる問題ととらえ、徹底的に準備しなければならない。
李新総裁のあいさつについて、「毎日経済」(4月21日)は「日々高まるインフレ圧力への対処は、物価安定を第1の目標とする韓国銀行にとって喫緊の課題」と指摘しつつも、「足元のインフレは金利の上げ下げで調整可能な需要側の要因ではなく、戦争、供給停滞、賃金といった費用と生産側の要因の結果だ。性急な利上げはインフレの抑制どころか、下手をすれば景気悪化につながりかねない」とする、LG経営研究院のチョ・ヨンム研究委員のコメントを紹介した。
(当間正明)
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