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Saturday, February 12, 2022

ソーシャルメディアには、「伝統的なメディア」からも学ぶべきことがある - WIRED.jp

『ロサンジェルス・タイムズ』は1999年10月10日、市中心部に新たにオープンした屋内競技場「ステイプルズ・センター」(現:クリプトドットコム・アリーナ)を特集した日曜版を発行した。特集の制作に関わった記者や編集者を含め編集部門のメンバーは知らされていなかったが、実は同紙はその号で得た広告収入をステイプルズ・センター側と折半する契約を結んでいたのである。

このことを知った社員は抗議した。発行者に謝罪を求める請願書に記者や編集者300人以上が署名し、発行者は謝罪している。事後検証の結果は12章からなる詳細な報告書にまとめられ、メディア批評で知られる同紙のデイヴィッド・ショーはそのなかで次のように指摘した。

「タイムズ紙の編集局に所属する者の多くがステイプルズ・センターの件について、倫理面での不穏な動向が醜いかたちで表面化した氷山の一角であると受け止めている。タイムズ紙のジャーナリズムの質と品格、評判を傷つけかねない、利益と株価を追求する動きの一角である」

この件は硬派なジャーナリズムにおける最も神聖な原則のひとつであり、「ファイアウォール」や“政教分離”とも称されるものを侵害した。それは経営側が編集に干渉してはならないとする原則である。

それから十数年が経ち、状況は大きく変化した。いまやソーシャルメディアが言論やニュース配信の中心地となっている。ソーシャルメディア各社のトップは揃って、自分たちはパブリッシャーではなく、ユーザーが制作したコンテンツを技術的に仲介しているにすぎないと主張する。

しかし同時に、現代のコミュニケーションと情報へのアクセスにおいて不可欠な役割を担っている、と誇らしげに謳っている。誰にどんな内容のコンテンツを見せるかを決定するソーシャルメディアの影響力は、いまやロサンジェルス・タイムズ紙がどんなに望んでも手に入らない規模になった。

フェイスブックの問題

しかしソーシャルメディア業界は、広告収入の追求とその他の社会的価値のバランスをどうとるかの哲学をまだ見出せていない。とりわけフェイスブック(現社名はメタ・プラットフォームズ)は、政教分離のような方針をまるで持ち合わせていないように見える。

こうしたなか『ウォール・ストリート・ジャーナル』は21年9月、論争を呼びそうな一連の調査報道記事のなかで、経営側による品質管理の取り組みへの干渉を阻まないと何が起きるのかを、新たな証拠とともに示している。

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事によると、フェイスブックの研究チームは「有意義な社会的交流」の促進を目的に変更されたニュースフィードのランク付けアルゴリズムについて調査していた。アルゴリズムを変更する際、同社の最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグは、ユーザーのエンゲージメントや利用時間が減少したとしても、これは「正しいこと」だと公式に語っていた。

ところが調査からは、シェアされやすいと判断した投稿を多く表示する機能を含むアルゴリズムは、意図せず「誤情報、有害な情報、暴力的なコンテンツ」を拡散していることが判明した。

ウォール・ストリート・ジャーナルが確認した文書によると、フェイスブックのインテグリティ部門のトップが経営側のトップ(つまりザッカーバーグ)に対応策を提案したところ、導入を却下されたことが記されていた。ユーザーエンゲージメントを犠牲にはできなかったのだろう。

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