韓日関係がほぼ10年に達する長期間下り坂を歩き、悪循環構造に陥没してしまっている。両国が互いに敬遠する現象に陥り、共有価値・利益に関する冷静な判断よりも感情が先立ち、東アジアやアジア太平洋地域の全体局面よりも両国関係だけを見て、現在と未来よりも過去だけに視線が固定された異常な症状をみせている。両国政府と国民は、関係悪化によって生まれる目に見える損失だけでなく、関係が良好な場合に得られるはずだった利益を失うことに伴う機会費用を冷静に認識し、悪循環の流れを断ち切るために積極的に乗り出さなければならない。 アジアで2カ国しかない経済協力開発機構(OECD)加盟国として基本価値を共有する両国は、超不確実性と戦略的流動性の時代に東アジアの平和と繁栄に責任ある利害当事国として関係回復を急がなければならない。一日も早く両国関係を引き算の関係から足し算の関係に転換し、北朝鮮の核武装と不安定、中国の外交・安保的攻勢、米国の新孤立主義志向によって揺れ動く東アジアの自由主義的地域秩序の安定化に力を合わせなければならない。 複合骨折状態である韓日関係を改善するためには万病に効く薬はなく、基本に忠実でなければならない。協力は増進して葛藤は低減することによって、崩れてしまった相互信頼を回復し、相手の重要性を再認識する道を着実に歩かなければならない。両国社会に反日・嫌韓の雰囲気が色濃く、新型コロナで交流と接触が制限されて環境は良くないが、両国は歴史問題の解決努力と協力事案の推進を分離する「ツートラック」アプローチを取りつつも、歴史問題の懸案である強制徴用と旧日本軍慰安婦問題の外交的解決に取り組んでいかなくてはならない。 最近、韓国裁判所で両事案に関する相反する判決が下された事実は、根本的に歴史の根源である日帝植民支配の法的性格を巡る両国の立場の違いを外交的妥協で封印した1965年韓日関係正常化の条約体制を司法的に裁こうとしたことに伴う問題が現れた結果だ。このような脈絡で、歴史問題の解決を二元的に接近して、外交懸案としての歴史問題は外交的交渉を通した短期的双方解決法を試みて、歴史和解と歴史問題の核心である歴史研究・教育は長期的一方解決法を推進することが望ましい。 韓日両国は今年下半期にそれぞれ大統領選と自民党総裁選、総選挙によって政治シーズンに入り、外交難題に取り組む政治的余力を期待するのは難しい。最善は追加の悪化を防ぐ管理を強化し、来年の新政府発足を契機にリセットを模索する環境を整えることだ。バイデン政府も水面下で善意の仲裁役を試みようとしていることから、両国指導者が実用的観点で政治的意志を発揮して関係回復の道を開いていくことを期待する。 申ガク秀(シン・ガクス)/法務法人「世宗(セジョン)」顧問・元外交部次官・リセットコリア外交安保分科委員
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