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Monday, August 3, 2020

坂本龍一「新しいものをクリエイトするには何かを壊さなければならない」─天才が英紙に語った“コロナ禍と日本人”(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース

NYのティーハウスで会うはずが…

本来なら、この文章はニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港の出発ラウンジで書かれているはずだった。足元につまらない土産が入った袋を置き、東京行きの14時間フライトの搭乗時間が迫るなか、ノートパソコンには前日に坂本龍一から放たれた電気がまだビリビリと走っているのだ。 その日は、ニューヨークのウエストビレッジにある「Té Company」に早めに到着して、テーブルを確保していたはずだ。ニューヨーカー誌がスリリングな店だと絶賛したこのティーハウス。1970~80年代にエレクトロポップの先駆者として、日本が野心的な産業大国であるだけでなく、とてつもなくクールな場所であることを世界に示した人物にインタビューするのに最適な場所だ。 ミュージシャンであり、ソングライター、パフォーマー、プロデューサー、そしてアクティビストでもある坂本は、予想通り、そして完璧な状態で私の15分前には到着していただろう。 お気に入りの席でウーロン茶を飲みながら、もしかしたら頭の中で新曲のアイデアがビビッとひらめいていたかもしれない。ポットに入った10ドルのお茶の湯気が、彼のブランドものの眼鏡を曇らせる。Té Companyの花椒風味のピーナッツ、豚肉の煮込み、名物のパイナップルのリンツァートルテは評判をはるかに超える味だろう。 そのように“パラレルな世界”ではすべてが素晴らしかったはずだ──。 「でも計画というのは、もはやあまり意味がありません」と、“リアルな世界”の坂本は穏やかな口調で言う。数年前にがんと闘った彼の語り口はほろ苦さを含んでいるように聞こえる。 彼の言う通りだ。レストランの予約からグラストンベリー・フェスティバル、そして東京五輪に至るまで、世界的なイベントがこぞって中止や変更になったことも、新型コロナウイルスの危機がもたらした悲惨な影響だ。 映画『戦場のメリークリスマス』で心に残る楽曲を書き下ろし、劇中でデヴィッド・ボウイから衝撃的なキスをされ、『シェルタリング・スカイ』の音楽も担当、『ラストエンペラー』でアカデミー賞を受賞した天才音楽家は、スカイプで私とバーチャルな対面をしたとき、もう何週間も一歩も外に出ていなかった。 坂本はパートナーと暮らすマンハッタンで外出を自粛している。坂本の生まれ故郷である東京にいる私は非常事態宣言下にあり、スーパーで買った寿司をデスクに置いている。お互いどこにも行けない。

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