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Wednesday, June 10, 2020

「こんな時だから近くを撮ろう」あなたにとっての標準レンズは何mm? - マイナビニュース

肉眼に近く、街のスナップに向く標準レンズ

僕は、緊急事態宣言が発令されてから毎日、意識的に周囲や近所のスナップを撮るようにしています。

使うカメラとレンズはほぼ決まっています。「僕が持ち出す3つのカメラと使い分け」でも少し触れましたが、シグマfp+45mm F2.8、35mm相当のレンズを搭載した富士フイルムX100V、28mm相当のリコーGR IIIのいずれか。ただし、GR IIIはランニング用で、最近はほとんど走っていないので出番が減少。代わりに、キヤノンEOS 5D Mark IVにEF50mm F1.8 STM、あるいはソニーα7R IVにSonnar T* FE 35mm F2.8 ZAかSonnar T* FE 55mm F1.8 ZAという組み合わせを使うようになりました。つまり、使う焦点距離は肉眼に近い遠近感を持つ、35~55mmの間のみということです。

カメラの世界では、ある程度趣味として極めると、広角・標準・望遠のズームレンズ3本をそろえるべし…という不文律があります。あくまで不文律なので「そんなの知らないよ」という方は、それで構わないのですが…。

3本のズームレンズが明るい高級タイプだと“大三元ズーム”、少し暗いけれど軽くて手ごろなタイプだと“小三元ズーム”と呼ばれています。構図や遠近感のアレンジがキモとなる風景写真は、大小はともかく3本そろえるのが確かにベター。

ただし、街角のスナップであればその限りではありません。広角や望遠だからこそ撮れる写真もありますが、こと街中を撮ると肉眼との違いが目立ち、レンズの効果ばかりが印象に残る写真になりがちです。

自分にとっての標準レンズを探してみよう

おさらいとして、改めて「標準」とは何かを説明しましょう。詳しいメカニズムは長文になるので割愛しますが、レンズには「mm」を単位とする焦点距離という数値があります。距離が長ければ望遠、短ければ広角です。その境目となる値が標準で、フルサイズでは50mm前後、APS-Cでは35mm前後、マイクロフォーサーズでは25mm前後になります。

これらの数字の根拠は、撮像素子(センサー)の対角線。画面の対角線長に近い焦点距離で撮影すると、遠近感が肉眼とほぼ変わりません。そこから長くなると画角(写る範囲)は狭くなり、遠くを引き寄せるように写すため、手前との遠近感が圧縮されます。反対に短くなると画角は広くなり、逆に遠くのものがより遠くに感じられるように写ります。

  • 実売価格1万円台半ばという安さながら、大きなボケが得られると評判のキヤノンの名レンズ「EF50mm F1.8 STM」で撮影。標準の単焦点レンズは手ごろな価格のものも多く、ズームレンズに頼りっぱなしに人にこそ試してほしいと感じます(キヤノンEOS 5D Mark IV・EF50mmF1.8 STM、絞り優先AE、F2.5、1/160秒、ISO400、WBオート)

つまり、目の前の光景を見たままに写すなら、標準前後の焦点距離が適しているということ。ただし、人によって撮っていて心地よく感じる焦点距離や、自分がイメージする写真が撮れる焦点距離は違います。24~28mmくらいの広がりがある写真が好みの人もいれば、85~100mmくらいで情報を整理し、クローズアップ気味に撮るのがいいという人もいるでしょう。

今のこの状況は、そうした“自分にとっての標準レンズ”を把握するチャンスでもあります。僕が学校やワークショップで行うのは、生徒や受講生にテープを渡し、ズームリングを各自好きな位置で固定させ、焦点距離を変えられない状態でしばらく撮ってもらうことです。自分の足で遠近を調整したり、構図を緻密に工夫することで、焦点距離を固定してもしっかり写真を撮ることはできます。

それでも狭いと感じたら次回は広角側に、反対に広いと感じたら望遠側にして挑戦します。標準ズームを持っていれば、今日は70mm、明日は50mm、明後日は35mm…と望遠側から少しずつ広角へシフトしていくのもいいでしょう。広角になるほど写り込む要素が増え、画面構成が難しくなるからです。逆に、普段広角を多用するけれど、いまひとつ納得できる作品が撮れない…という人は、広角側から始めてもいいかもしれません。

  • 今一番おすすめの標準レンズは、シグマの「45mm F2.8 DG DN」。使えるのは、シグマとパナソニックが参画するライカLマウントと、ソニーEマウントのユーザーのみだが、描写はもちろん本体の質感もすばらしい仕上がりです(シグマfp・シグマ45mm F2.8 DG DN、絞り優先AE、F5.6、1/160秒、-1.3EV補正、ISO100、WBオート)

旅先でそんなトレーニングを行うのはもったいないですが、近所であれば気楽にできますし、前回との違いや上達も実感しやすいはず。“自分にとっての標準レンズ”が分かると、数ある単焦点レンズのなかからどれを買えばよいのか分かります。近所を散歩しながら撮影するときや、今後身軽な装備で旅に出たいとき、レンズ1本で出掛けることができます。

たくさんのレンズがあれば、撮れる写真のバリエーションは増えますが、それはレンズの効果で増えたように見えるだけ。同じ焦点距離で引いたり寄ったり、写真本来のテクニックを駆使して撮ることで、ビジュアル的にも内容的にも深みのある写真を撮ることができるはず。焦点距離を意識して撮影できるようになると、難易度の高い広角や望遠をより的確に使いこなすことができるでしょう。

【編集部より】鹿野カメラマンが、緊急事態宣言発令中の近所を撮った作品で写真展「明日COLOR」を行います。期間は6月30日(火)〜7月12日(日)、会場は東京・日本橋小伝馬町のルーニィ247ファインアーツです。詳細は写真展のWebサイトにて。

鹿野貴司(しかのたかし)

1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、広告や雑誌の撮影を手掛ける。日本大学芸術学部写真学科非常勤講師、埼玉県立芸術総合高等学校非常勤講師。

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June 11, 2020 at 04:50AM
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