日本記録を塗り替えた陸上男子円盤投げの堤雄司（30、ALSOK群馬、札拓北高出）が東京五輪の標準記録（66メートル）突破を目指し、練習を続けている。3月27日に行われた母校・国士舘大の競技会で62メートル59をマークし、湯上剛輝（26、トヨタ自動車）の持つ日本記録を43センチ更新。2017年に続き、2度目の日本記録保持者となった道産子アスリート。新型コロナウイルス感染拡大の影響でプラン見直しを余儀なくされたが、1年後に延期となった東京五輪出場を目指し、自己研さんに励む。
驚きはない。堤にとって”タイトル奪還”はあくまでも通過点だ。「うれしかったですけど、いけるだろうと思ってました。でも、まだまだ上に手が届く。完璧な投げは今まで一度もない」。自信を持って言い切った。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、東京五輪の開催が1年延期となった。大舞台への挑戦は変わらない。容易な道ではないのは百も承知だ。「1％でもチャンスがあるなら、そこに向かう」と力を込めた。
フィールド競技の出場枠は各種目32人。参加標準記録（66メートル）の突破者と世界ランキング上位者がそれぞれ半数（16人）ずつ出場権を得る。堤は現在、日本勢1番手ながら世界ランク53位。飛躍的な記録アップか大幅な順位巻き返しが必要だ。
すべてのプランを憎きウイルスが崩壊させた。本番が刻一刻と迫る中、各国際大会に照準を合わせ”逆転出場”への道のりを思い描いてきた。だが、五輪の延期が決定した。単純に時間的猶予が生まれたわけではない。各大会の再開めども立っていない。
それでも「66メートルの参加標準をいつでも突破できる力があれば、心配する必要なんてない。弱い自分が悪いだけ。文句があるなら強くなればいい。今はいつ（大会が）再開されてもいいように準備するだけ」と潔い。
東京五輪は目標だが、すべてではない。「夢をかなえる手段」と位置づける。「僕自身が誰かの夢になることが夢。そのための一つの手段が五輪です」。自然体を貫く強さを有する。それだけの努力を重ね、結果も出してきた。堤は挑戦をやめない。 （神馬崇司）
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