加齢とともに目の機能は低下する。特に注意すべきは緑内障だ。視神経の障害で視野が徐々に狭くなり、最悪の場合は失明にいたる病気で、40代以上の20人に1人、70代の10人に1人が発症する。
緑内障は健康診断の「視力検査」では検知できず、眼科で「視野検査」を受ける必要がある。二本松眼科病院の平松類医師が指摘する。
「視野検査では、“視野がどれだけ狭まっているか”を数値化します。数値の1つの指標としては、0が正常、マイナス30が失明レベルで、自覚症状が出るのはマイナス20ほどです」
この数値をもとに「進行度合い」「視野が欠ける場所」「年齢」などを考慮して手術するかどうかを判断する。
「緑内障の手術は『視野を回復する』のではなく、『進行を食い止める』もの。2~3か月で視野検査の数値が1下がるほど進行が早い人は急いで手術する必要がありますが、進行が遅い人は慌てて手術する必要はありません。
手術には失明するリスクもあるため、進行の遅い高齢者の場合は手術を避けます。また、視野の真ん中が欠けるよりも、外側が欠けるほうが日常生活に支障をきたすリスクが少ないため、手術の必要性は低くなります」(平松医師)
水晶体が白濁することで視力が下がる白内障は、70代の8割が罹患するとされる。こちらは健康診断の視力検査や、眼球に光を当て直接水晶体を観察して診断する。
「検査で白内障と診断されたとしても、“すぐ手術しないと手遅れになる”ということはほとんどありません。それゆえ、どのくらい視力が下がったら手術を勧めるかは、医師によって判断がまちまちです。
患者側としても判断が難しく、あまり早い段階で手術に踏み切ると、たとえば白内障で視力0.9の人が手術して1.0になっても、“あまり変わらない”と満足度は低くなる。手術には感染症のリスクなどがあることも踏まえた判断が必要です」(同前)
平松医師によれば、自身を含め多くの眼科医が「検査で視力が0.7以下に落ちていたら手術を勧める」というが、それも絶対視する必要はないと付け加える。
「両目での視力0.7というのは裸眼で車を運転できる基準です。ただし、人によってはそれ以下でも生活に不便を感じないケースも当然ある。慌てる必要はなく、特殊な状態でなければ自分の生活に支障を感じてから手術という判断をすればいいでしょう」(平松医師)
※週刊ポスト2020年3月13日号
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