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Thursday, March 5, 2020

オーナーは常に自己防衛を。設備が使えなくなれば賃料減額…長く放置後の請求などに備え特約を「改正民法」解説④(最終回)|不動産投資の健美家 - 健美家株式会社

賃料下がるのは借主に責任ない場合
条文注目され減額請求が増えるかも

2020年4月に施行される改正民法では、不動産の賃貸借に関するルールが大きく変わり、マンション、アパートなどの賃貸管理へも影響する。シリーズ最終回の今回も、1月24日掲載の前回に引き続いて、ことぶき法律事務所(東京都新宿区)の塚本智康弁護士にご登場いただき、新たに加わる「一部滅失による賃料減額」の条文を解説いただく。

借主の責任によらずトイレ、風呂といった設備が使えなくなるなどした場合、使えなくなった部分に応じて家賃が減額されるという規定だが、長い間、不具合を放置した借主が、突然、後でさかのぼって減額を求めてくるといった困るケースもありえる。やはりオーナーは、特約を設けるなどして自分を守る工夫が大切だ。

「一部滅失による賃料減額」について解説する塚本智康弁護士
「一部滅失による賃料減額」について解説する塚本智康弁護士

まずは、改正民法の611条1項をみてみよう。

「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」

つまり、貸室の風呂、トイレ、エアコンといった設備が使えなくなったりした場合、それが、借主の責任によるものでなければ、使えなくなった部分に応じて賃料が減額される、という取り決めだ。
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「改正前の民法にも似た条文があり、『借主が減額の請求をした場合に、減額される』という書き方でした。しかし、改正後は、『借主が賃料を下げてくれと、とくに言わなくても、当然、賃料は下がる』という書き方になったのです」と、塚本弁護士は説明する。

塚本弁護士は「法的には改正前後であまり変わりません。『当然に賃料が下がる』といっても、実際に、借主が賃料の減額を主張しなければ、事実上、減額されませんから」とする。

ただ、「改正後の条文がクローズアップされることで、減額の要望が借主から増えるかもしれません」という。

減額は日管協のガイドラインも目安に
水は使えトイレ使えなければ減額20%

では具体的に、賃料はどうやって減額されるのだろう? 日本賃貸住宅管理協会のガイドラインをもとに、「賃料が月10万円の部屋で、水は使えるけど、トイレが3日間、使えなくなったケース」をみてみよう。
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ガイドラインによると、この場合、賃料の減額割合は20%、減額の対象とならない「免責日数」は2日間となる。これをもとに、日割りでいくら減額しなければならないか計算すると、「10万円×20%×(3日−2日)÷31日」で、約645円となる。日割り計算は、30日ある月は30で、28日ある月は28で割ることになる。

もっとも、

「協会の作ったガイドラインは、あくまで目安です。裁判に持ち込まれた場合、裁判所がこの通りの額にするとは限りません。ガイドラインを一つのベースにして、当事者間で納得が得られる額で結論を出すことになるでしょう」

なお、台風などの災害で電力会社の送電線が切れ、電気の供給がストップしたような場合は、賃料は減額されない。

「この場合、電力会社と電気の契約者の間の問題になります。貸している部屋の設備の不具合が原因ではないので、賃料減額の対象にはなりません」

減額は設備が使えなくなったとき開始
契約には「すぐ通知」求める特約を

オーナーにとっては、注意しなければならないケースがある。
たとえば、風呂やトイレが2か月前から使えなくなっていたが、借主が放置し、2か月たってようやく、オーナーに連絡して、減額を求めてきたような場合だ。

法律的には、風呂やトイレに不具合があり、使えなくなった時から賃料の減額がスタートする。このためオーナーは、2カ月間で減額しなければならなかった賃料分を、あらためて借主に返さなければならないケースがありうるのだ。

ただ、この場合、本当に2カ月前から使えなくなったのかどうか、簡単には分からない。また、「ふつう考えると、『2カ月間も借主が申し出なかったのなら、生活に支障がなかったのではないか』ということになり、『賃料は減額しなくてもいいのでは』となりえます」

そこでオーナーの対処法として塚本弁護士が勧めるのは、賃貸借契約の際、特約をつけることだ。

塚本弁護士は、「『部屋の設備などが使えなくなったら、借主はすぐ通知しなければならない』『その義務を履行しなかった場合、通知前の賃料の減額はしない』という特約をつけておくほうがいいでしょう。この特約には、十分、合理性があると思います」とする。1月24日に掲載した記事で紹介した「原状回復」をめぐる問題と同じく、オーナーは?自己防衛?が必要なのだ。

賃料減額だけでなく、これまでみてきたように、改正民法は複雑で、内容も多岐にわたっている。オーナーは何が変わるのか、自分にどんな影響があるのかしっかり理解し、分からなかったり困ったりすれば、塚本弁護士のような専門家に相談して、不動産経営に万全を期したい。

取材・文 小田切隆

【プロフィール】 経済ジャーナリスト。長年、政府機関や中央省庁、民間企業など、幅広い分野で取材に携わる。ニュースサイト「マネー現代」(講談社)、経済誌「月刊経理ウーマン」(研修出版)「近代セールス」(近代セールス社)などで記事を執筆・連載。

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March 06, 2020 at 04:13AM
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