有責配偶者(不倫をしたなどで夫婦関係の破綻の責任がある配偶者)からの離婚請求が認められには、「相当期間の別居」、「未成熟子(未成年の子)の不存在」、そして「相手方配偶者が離婚により精神的・社会的にきわめて過酷な状態に置かれることがないこと」といった「過酷状態の不存在」の以上3つの要件が満たされる場合に離婚請求が容認される(最高裁判決昭和62年9月2日)ということをお伝えしました。
有責配偶者からの離婚請求については、「不倫」をしても離婚請求はできるのか~請求が認められる「3つ」の要件をご参照ください。
・「相当期間の別居」については、「不倫」をしても離婚請求はできるのか~「別居期間」はどの程度求められるかをご参照ください。
そこで今回は、3つの要件の中から2番目の「未成熟子の不存在」について深掘りしてみたいと思います。
「信義則」に反さないこと
「未成熟子がいる場合でも、ただその一事をもって請求を排斥するべきではなく、総合的に事情を考慮して信義則に反さないときは、請求の容認することができるのが相当である」という判例があます(最高裁判決平成6年[1994年]2月8日)。
この判決でうたわれている「信義則」(=信義誠実の原則)とは、当事者が相手の信頼にそむかず誠意をもって行動しなければならないという法原則の一つを指します。民法ではこの基本原則を第1条2項に規定しています。
民法1条(基本原則)
1 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。
両親の「離婚」と「子の福祉」
この判決では、一番下の子が高校2年生で未成熟子にあたるが、3歳の幼少時から妻の監護の下で育てられ、間もなく高校を卒業する年齢に達していること、夫は妻に毎月15万円送金してきた実績に照らして子の養育に無関心であったものではなく、夫から妻への離婚に伴う経済的給付も実現が期待できることが考慮されています。
未成熟子がいる場合は、当然「未成熟子の福祉」を中心に考えなければなりません。このケースのように裁判以前から別居が続き、今後もそれが継続するであろう夫婦関係において、かえって離婚しないことが未成熟子の子の福祉に悪影響を及ぼすことが懸念されるのは想像に難くないでしょう。
この判決では、「未成熟子の福祉」を離婚後の親子の交流や養育費の問題など離婚後の処理を充実させることで実現できる保障があるのであれば、未成熟子の存在を離婚を阻止する理由にする必要は少ないと判断されたと考えられます。
不倫などが原因による有責配偶者からの離婚請求に関しては、子どもには一切関係のないことです。どのような離婚原因でも未成熟子の福祉については最優先で考慮しなければなませんが、有責配偶者からの離婚請求に関しては特に考慮されるべきではないでしょうか。
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February 19, 2020 at 10:19AM
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