髙田春奈さんは2022年9月29日にWEリーグのチェアに就任。あれから1年余りが経過しました。すでに前任者が進むべくレールを敷いた2022−23シーズンと違い、2023−24シーズンは髙田体制のスタッフ自らが準備、実行に移している初めてのシーズンです。
FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023での躍進の余韻、第19回アジア競技大会(2022/杭州)優勝も追い風となり、10月14日に開催した2023-24WEリーグカップ決勝は好評。続いて11月11日に開幕した2023−24 WEリーグの入場者数は、まずまずの数字で推移しています。
WEリーグ チェア 髙田春奈さん「どの試合もとても面白いと思います」 女子サッカーの気になることを #女子サカマガ が全部聞いてみた(前篇)
今回は髙田さんのインタビュー取材記事の後篇です。前篇に続いてたっぷりとお伝えします。順調に見えた3シーズン目のWEリーグですが、ウィンターブレイクに事件が起こりました。日本の女子サッカーの空洞化現象が懸念されます。髙田さんは、WEリーグの持つ力をどのように捉えているのでしょうか。

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なでしこジャパン(日本女子代表)経験のある5選手が海外クラブに移籍する衝撃
海外に行きたい選手を引き止めることはできない
このウィンターブレイクになでしこジャパン(日本女子代表)経験のある5人の選手が海外クラブに移籍しました。ジェフユナイテッド市原・千葉レディースでプレーしていた千葉玲海菜選手はドイツ・ブンデスリーガ女子のアイントラハト・フランクフルト・フラウエンへ移籍。セレッソ大阪ヤンマーレディースで10番を背負ってきた小山史乃観選手もスウェーデン・ダームアルスヴェンスカンのユールゴーデンI Fダムへ移籍しました。
JFAアカデミー福島でプレーしていた谷川萌々子選手と古賀塔子選手は高校を卒業前に欧州に旅立ちました。谷川選手は千葉選手と同じくドイツ・ブンデスリーガ女子のバイエルン・ミュンヘンへ。古賀選手はオランダのフェイエノールトに移籍しました。いずれも名門クラブです。
さらに、大宮アルディージャVENTUSでプレーしていたスタンボー華選手は全米で最も人気のあるエンジェルシティFCに移籍。背番号1と発表されました。
※スタンボー華選手はなでしこジャパン(日本女子代表)の選手登録経験はありますが出場はありません。

古賀塔子選手(フェイエノールト)
特に、WEリーグでのプレー経験がないまま欧州へ旅立つ谷川選手と古賀選手の移籍は女子サッカー関係者に大きなインパクトを与えました。こうした有力選手の海外移籍について、髙田さんは、どのように考えているのでしょうか。
「海外でのプレーを魅力的だと思う選手が海外クラブへ移籍されます。ですから、WEリーグは『もっと皆がプレーしたいと思える場所』『成長できると思える場所』にしていかなければならないと思っています。ただ、海外に行きたい選手をWEリーグが引き止めることはできません。」
海外での経験をWEリーグに還元してくれた川澄奈穂美(新潟L)
逆に、海外で経験を積み実績を残した選手が帰国しWEリーグに好影響を与えてくれる事例も生まれました。今シーズンからアルビレックス新潟レディースでプレーしている川澄奈穂美選手です。川澄選手の加わったアルビレックス新潟レディースは2023−24 WEリーグカップで準優勝。ここまで2023−24 WEリーグは3位につけています。1試合あたりの平均入場者数は昨シーズンの同時期と比較すると204%となっています。
アルビレックス新潟レディースでは、川澄選手が小学生のときから一緒にプレーする上尾野辺めぐみ選手がプレーしています。そして、川澄選手と上尾野辺選手が中学生のときに一緒にプレーした大和シルフィードの後輩にあたる杉田亜未選手、さらには、杉田選手と昨シーズンはノジマステラ神奈川相模原の中盤でコンビを組んでいた石田千尋選手も、今シーズンからアルビレックス新潟レディースでプレーしています。
「移籍をしても選手やスタッフの仲が良いのは女子サッカー界の良いところだと思います。フットボールのレベルを比較するだけではなく『仲間と一緒にトップを目指そう』『仲間と一緒にプレーしたい』と思っている選手も多い気がします。海外クラブでプレーし、これから帰ってくる選手のためにも、まずは、フットボールのレベルを上げることが重要です。WEリーグが常にすごい試合を見せていくことで『日本でプレーをしても、こんなに高いレベルの試合をできる』と思ってもらいたいです。まだプレーヤーとして脂が乗った時期に海外から戻り『WEリーグを活性化させよう』と思ってくれる選手が、おそらく、これから出てくるのでは……と、少し楽観的な期待もしています。」

川澄奈穂美選手(新潟L) 写真提供:WEリーグ
「セレッソ大阪堺レディース(当時)から世界に羽ばたかれた宝田沙織選手(レスター・シティWFC )と林穂之香選手(ウェストハム・ユナイテッド)は、なでしこリーグ時代から、 ヤンマーホールディングスの『ヤンマーアンバサダー』として活動されています。Jクラブであるセレッソ大阪はJ1で活躍されています。親会社のヤンマーホールディングスはサッカーに対してご理解があり、積極的に投資していただいています。とてもありがたい存在だと思っています。」
セレッソ大阪ヤンマーレディースの参入で関西の女子サッカー発展へ膨らむ期待
今シーズンはオリジナル11にセレッソ大阪ヤンマーレディースが加わり12チームのリーグ戦となりました。初めての途中参入チームは、スムーズにWEリーグの仲間入りをできたでしょうか。
セレッソ大阪はヤンマーディーゼルサッカー部の歴史と伝統の上にあるクラブで、その女子チームであるセレッソ大阪ヤンマーレディースのWEリーグ参入は関西方面を中心に大きな話題となりました。

男女チームが合同で撮影しているセレッソ大阪 ©CEREZO OSAKA
これまでの11チームとは少し違うセレッソ大阪ヤンマーレディースの取り組みがWEリーグ全体への刺激に
第1節のジェフユナイテッド市原・千葉レディース戦(ヨドコウ桜スタジアム)では、Jリーグセレッソ大阪の試合のパブリックビューイングを組み合わせた試合運営からスタート。WEリーグに新風を吹き込んでいます。
「ヤンマーホールディングスの本社に行くと、エレベーターの扉にもセレッソ大阪の選手が表示されていて、社内がセレッソ大阪の選手のパワーに満ちている感じがします。そして、Jリーグの選手とWEリーグの選手を同じように扱ってくださっていることが伝わります。」

WEリーグ チェア 髙田春奈さん 撮影:宇都宮徹壱 TOP画像も
ヤンマーホールディングスは「ダイバーシティ&インクルージョン」を基本的な考え方として表明し、女性社員が多方面で活躍できる職場環境を整備しています。そうした企業活動をする中で「Jクラブのセレッソ大阪はプロチームだけれど女子はアマチュアチームで良いのだろうか?」という声があり、それがセレッソ大阪堺レディース(当時) のWEリーグ参入を応援する理由の一つになったという経緯があります。
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