[ニューヨーク 28日 ロイター] - 中国発の電子商取引(EC)サイト「SHEIN(シーイン)」がニューヨークで新規株式公開(IPO)を目指そうとする中で、米議員からは、販売商品と強制労働の関連がないと証明されない限り、上場を認めるべきでないとの声が再び高まっている。
シーインは27日に米証券取引委員会(SEC)に上場を申請。来年中にIPOを実施する可能性がある。 もっと見る 同社はまだ、売り出す株の規模や公開価格は決めていないが、ブルームバーグは今月、最大900億ドルの企業価値を目標にしていると伝えた。
2012年創業のシーインは、少なくともここ3年間、米国でのIPOを狙ってきた。ただ、米中の政治的摩擦のあおりを受け、これまで延び延びになってきた。
一方で、シーインは中国国内でほとんどを生産している低価格の衣料品や家庭用品について、その過程で強制されたウイグル族などの労働力が使用されているとの批判にさらされている。
問題視されているのは、中国当局がウイグル族やその他のイスラム系少数民族を強制収容しているとされる新疆ウイグル自治区の下請けメーカーと、シーインが契約している可能性だ。
そのためシーインがSECから上場の承認を得る上で、自社のサプライチェーン(供給網)が「清廉潔白」だと当局に納得させることが最大のハードルになるだろう。
米民主党のジェニファー・ウェクストン下院議員は、28日の声明で「シーインが米国で上場したいなら、米国の消費者に自社商品は強制労働に由来してないと証明しなければならない」と述べた。
ウェクストン氏は今年、SECに対してシーインがサプライチェーンに強制的な労働力を使用していないとはっきりさせるまで、IPO手続きを止めることを求める超党派の働きかけを主導した。
野党共和党に所属する16州の司法長官のグループは、SECにシーインの監査を要求。シーインは、米国の関税を不当に回避した疑いでも米議会で調査されている。
シーインは今回、コメント要請に回答していない。だが、以前はロイターに対し、強制労働を決して容認せず、新疆ウイグル自治区の下請けメーカーとの契約も存在しないと表明していた。
ミケルマン・アンド・ロビンソンで上場証券を扱う弁護士のミーガン・ペニック氏は、SECがシーイン上場を「直接的に阻止する」公算は乏しいとしつつも、非常に詳細な情報開示要件を設けてシーインが手続きを進めるのを難しくしたり、極端に細分化して事実上は手続きを不可能にさせたりする可能性はある、との見方を示した。
ペニック氏は「強制労働や知的財産に関して、(シーインが)SECを満足させるだけの回答を出せないような問題が出てくるかもしれない」と話す。
<ロビー活動>
開示情報に基づくと、シーインは上場に向けて米議会の支持を得るため、今年に入って128万ドルをロビー活動に投じてきた。各議員との個人的な面会も設定しており、その相手には批判派の大物も含まれる。
事情に詳しい関係者の1人は、シーイン側が中国からサプライチェーンをインドなどに分散する努力をしていると強調したと明かした。
それでも共和党のマルコ・ルビオ上院議員は、ロイターに「シーインは基本的に中国企業であり、投資家は中国企業の(株式)売り出しにはこの上なく注意してかからなければならない。同社が上場を目指せば事業慣行、とりわけ奴隷労働や米国の通関規則逃れとの関連への注目度が増すはずだ。私は、IPOに先立つシーインの情報開示を注視していく」と語った。
ルビオ氏は今年6月、他の上院議員宛て書簡で、シーインのロビー活動を批判している。
同じ共和党の下院議員で中国問題に関する議会・行政府委員会の議長を務めるクリス・スミス氏も、シーインのロビー活動に厳しい目を向ける。
スミス氏は「シーインの投資家は誰であれ、特に米議会が強制労働に終止符を打ち、中国企業向け輸入補助金を撤廃しろと要求している以上、シーインのビジネスモデルにかかわる重大なリスクを警戒するべきだ」とくぎを刺した。
<SECの対応が及ぼす影響>
シーインは、アパレル企業が使用する綿花の産地を特定する技術を持つオリテインと提携している点をアピールしている。このオリテインの技術は、米政府も綿花が新疆ウイグル自治区産でないかどうか調べるために利用している。
シーインは以前、ロイターに対し、外部の工場から仕入れた綿のサンプル全てを検査していると説明した。
ただ、シーインのそうした検査でも、毎年世界中に輸出している膨大な衣料品を十分にチェックできないとの声が出ている。
こうした中で弁護士のペニック氏は、SECがシーインのIPOをどう扱うかが、TikToK(ティックトック)やピンドゥオドゥオ(拼多多)傘下のテムなど将来、米国での上場を検討するかもしれない中国系企業にとって、重要な影響を及ぼすだろうと予想している。
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