[シカゴ 10日 ロイター] - 米航空会社はコロナ後に訪れた旅行慣行の「ニューノーマル(新常態)」に対応すべく、便数の削減や路線の刷新、ひいてはオーバーブッキングなど、あの手この手を繰り出している。
消費者の旅行意欲は依然として強いが、コロナ前と比べてパターンが変化したことで経営コストが上昇し、売上高に響いているからだ。
米経済の先行きに不透明感が強まっていることもあり、旅行支出をめぐる懸念から航空株は、今年1月の高値から6%下落している。
シティのアナリスト、ステーブン・トレント氏は「労働環境がフレキシブルになったため、航空券の購入パターンが変化している。そのことに慣れなければならない」と語った。
乗客が旅行計画を変える頻度が以前よりも高まったため、連絡無しに搭乗しない「ノーショー」比率が上昇した。
また、週半ばの旅行需要が弱まり、週末とその前後のピーク日の需要が強まる傾向も見られる。ロイターが米運輸保安庁のデータを分析したところ、今年は火曜と水曜の乗客数が月曜に比べて平均14%少なく、木曜に回復している。
さらに、昨年に比べて早めに旅行を予約する傾向が強まり、旅行日が近づくとチケット販売が減速している。
航空各社は、こうしたパターンの変化に適応する必要がある。
格安航空のフロンティア航空は火曜と水曜の便を約20%削減することを決めた。昨年は、週半ばでもさほど需要が落ち込まないとの声が、一部航空会社から聞かれた。
同航空のシニア・バイスプレジデント、ダニエル・シュルツ氏はこの変化について、週に2、3日だけ出社するフレキシブル勤務の導入に原因があると説明。「最も一般的な出社日が火曜と水曜だ」と語った。
一方で、同航空は先週、旅行ピーク日の有効座席マイル当たり収入がコロナ前よりも増えたと発表した。こうした日については、顧客が以前よりもずっと多く旅行に支出するようになったからだという。
フロンティア航空はまた、路線網を改変して幾つかの路線を廃止した。
ユナイテッド航空は先月、フロリダ路線を拡大する意向を示した。同社は出張客に重点を置いてきたが、出張需要はコロナ前の水準まで回復しておらず、これまで比較的手薄だったカリブ海地域とフロリダを強化する狙いだ。これらの地域は冬場に需要が伸びる傾向がある。
スコット・カービー最高経営責任者(CEO)は「パンデミック前に比べて需要が構造的に変化したと考えている。ニューノーマルがどんなものか、まだ、手探りしている状態だ」と述べた。
<過剰予約>
パンデミック中は旅行規制や健康上の不安から、前もって旅行計画を立てるのが困難だったが、今は航空便を早めに予約する傾向が強まった。
ユナイテッドによると、同社便は22日以上前の予約の方が21日以内の分よりも堅調だ。デルタ航空も、31日以上前の予約が増え、30日以内の分は減少していると明かしている。
同航空のエド・バスティアンCEOはこの原因について、顧客が早めに旅行を確定しようとしているのに加え、多くの航空会社が予約変更手数料を撤廃したためだと説明した。
こうした変化は、国内便の運賃に低下圧力をかけている。
オンライン旅行代理店ホッパーのデータによると、国内往復便の4月の平均運賃は前年同月比で15%低下した。
ただ、ホッパーの主席エコノミスト、ヘイレイ・バーグ氏は、旅行支出全般は増えたとしている。
一方、予約変更手数料の免除により直前の計画変更が容易になり、「座席利用率」、すなわち売れた座席の割合が低下している。デルタ航空の3月の座席利用率は3カ月前に比べて4%ポイント下がった。
この問題に対処するため、デルタはオーバーブッキング(過剰予約)する便をさらに増やす方針を示している。これにより、予約便を取り消される乗客が増えるリスクがある。
グレン・ハウエンシュタイン社長は「パンデミック前は随分安定していた。今は、ニューノーマルとも言うべき世界に適応しているところだ」と話した。
(Rajesh Kumar Singh記者)
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