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Saturday, July 16, 2022

【ワークライフ】 一部社員への出社要請は「不公平」、在宅勤務者と出社組の緊張関係 - BBCニュース

アレックス・クリスティアン

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画像提供, Getty Images

新型コロナウイルスの影響で多くの人がリモートワークに切り替わってから2年が過ぎた。企業側はいま、従業員を職場へ呼び戻しつつある。しかし、誰もが出社を求められているわけではなく、その不公平感から従業員や雇用主の間で反感が生まれている。

今年2月、マークさんが勤める米オハイオ州のエネルギー企業は、彼にオフィスへ戻るよう告げた。上司はマークさんのソフトウェア・エンジニアとしての在宅勤務の成果を高く評価していたし、締め切りに遅れたことも1度もなかった。ただ、1000人超の従業員を抱えるこの会社で週3日の出社を命じられたのは当初、マークさんの部署だけだった。

「私たちのチームは少人数で、全員が同じ意見です」と、マークさんは説明する。「ふだんの通常業務のためなら、オフィスにいるメリットは何もありません。自分の業務は全て自宅でこなせるので」。マークさんは雇用への影響を考慮して、名字を伏せて取材に応じてくれた。

オフィス復帰という現実を突き付けられたのは、マークさんのチームの5人と、ほかに数人だけだった。「ほぼ毎日、両手で数えられるほどの従業員しか来ていません。自分たちは(社内の)ピラミッドの最下層にいるので、オフィスにいるべきだとはっきり言われています」

一方で、マークさんより地位が上の人たちは今もリモートワークを続けている。中にはアメリカ中を旅しながら働く人もいる。「彼らは1度もオフィスに来ていません」とマークさんは言う。「バカンス先からオンラインで全社会議に参加する従業員もいました。その人たちはここ数回、会議でカメラをオフにしていたので、いかにもバカンス中の映像について誰かが何か言ったに違いありません」。

マークさんやチームの中では、在宅勤務をすると人とオフィスに戻らなければならない人との格差が摩擦を生んでいる。従業員によって異なるルールが適用され、その論理的根拠が説明されないことを不公平だと感じるからだ。「管理側から何の説明もありません」とマークさんは言う。「バーチャル会議の場でオフィス復帰について質問を提出できますが、直接回答が得られたことは1度もありません」。

パンデミック対策規制が解除されるにつれ、従業員をオフィスへ呼び戻す企業が増えている。ただ、そのオフィス復帰ルールは全従業員に例外なく適用されているわけではない。上司によっては個人や特定のグループに対して例外を認めているケースもあり、オフィス復帰について説明がつかない状況となっている。ほとんどの従業員に特定の行動を義務付ける一方で、ほかの従業員には特別な対応を取っているのが現状だ。

組織内の一部の従業員が全く異なる出勤規則にもとづいて働いているこの状況が、従業員間の緊張を表面化させ、職場の力関係にも影響を及ぼしつつある。

「明確な方針がない」

従業員をオフィスに呼び戻すのが難しいのは、意外でもなんでもない。パンデミックに見舞われ、従業員はほぼ一夜にしてリモートワークに切り替えねばならなかった。ロックダウンが敷かれたことで、労働者たちは日常生活の大変動に直面した。管理職はチームがいつどこで仕事をこなすのか、柔軟に対応しなければならなかった。場合によっては、子供を持つ人が勤務時間を変えたり、狭苦しい都市部から地方に移住する人もいた。

それから2年がたち、多くの従業員がオフィス勤務という従来の形態にとらわれず、生産性を維持するために独自の働き方を作り上げてきた。このような従業員の中には、パンデミック下に勤務地から離れ、今では在宅で仕事を続けたいと考えている人など、雇用主から引き続きリモートワークが認められている人もいる。リモートワークを条件に採用された新入社員もいる。

しかし一方で従業員の大部分は、在宅勤務と出社を組み合わせたハイブリッド勤務をするか、あるいはフルタイムでオフィスに戻るよう求められている。上司は特定の従業員に出社を命じつつ、ほかの従業員にはリモートワークを容認している。そのため、雇用主が一部の人をひいきして柔軟な対応を提示しつつ、その他大勢には制限を課しているように映る。

上司にしてみれば、通勤圏内に住み続けている人や若手を呼び戻すのはたやすいものだ。しかし、中堅以上の従業員相手ではそうはいかない。若手より発言力のある中堅は、柔軟な勤務形態の維持に、その影響力を駆使できるかもしれないからだ。

「経験豊富な従業員ほど、ハイブリッドやリモートワークを強く望む傾向にある」と、英リーズ大学ビジネススクールのヘレン・ヒューズ准教授は指摘する。「彼らにはこれまでに築いてきた人間関係や評判に根付いた、ソーシャル・キャピタル(社会や地域における人々の結びつきを表す概念)や影響力がすでに備わっていることが多いので」。

現在の労働力不足を考えれば、経験豊富な人材への需要は以前より高まっているかもしれない。中でも、才能獲得競争が最も激しい分野では特に。そうした人材を確保したい企業側は、場合によっては譲歩せざるを得ない。

とはいえ、一部の従業員にだけ特別な労働条件を認めれば不公平感を生み、チームを分断させ、ほかの従業員が不満を募らせる可能性が出てくる。「誰が自宅で仕事をし、誰がオフィスに行かなければならないかという決定が不公平に映ったり、一部の従業員だけ厚遇されるなら、職場で内集団(自らと同一視し、所属感を抱く集団)と外集団(他者とみなされた集団)が生まれるかもしれない」と、リーズ大学のヒューズ准教授は指摘する。

そうなれば派閥が生まれ、多数派のオフィスワーカーと少数派のリモートワーカーという2層構造となり、両者の間に亀裂ができる恐れがあると、ヒューズ准教授は付け加えた。

ロンドンを拠点とするフレックスタイム制のコンサルタント会社「Timewise」のコンサルティング・ディレクター、エイミー・バターワースさんは、不当な扱いを受ける従業員が出てきて会社の結束力が低下すると、職場の力関係に影響を与え得るマイナスの結果につながる可能性があるとしている。「仕事の質の低下が一体性に大打撃を与え、チームの力を最大限引き出すことができなくなるでしょう」。

Some employees are reporting that senior-level workers are working from anywhere, while other workers are required to be in office

画像提供, Getty Images

企業がオフィスワーク復活を方針として打ち出そうと躍起になる中、説得力のある説明を上司がしないせいで、従業員間の緊張が高まる場合もある。

デジタル分野で働くサラさんは、イングランド北部で新しい仕事を始めた際、地元に住んでいるのだからフルタイムで本社にいる必要があると、雇用主から告げられたという。一方で複数の同僚は、通勤圏内ではないという理由でリモートワークが認められた。「上司は明確なフレックスタイム制の方針もないまま、自分たちで勝手に決めていました」と、サラさんは言う。「私はほかの人より簡単に出社できるのだから、毎日ここ(オフィス)にいるべきだというのが、上司の言い分でした」。

サラさんは同僚に対してではなく、雇用主に対して怒りを募らせた。「私は結局のところ、住んでいる場所に基づいて不当な扱いを受けたわけです。フレックス勤務はオフィスから物理的に近いかどうかで適用されるべきではないのに」。

「幽霊のような上司」にオフィスに戻れと言われ

雇用主はオフィスに戻らなければならない従業員と、フレキシブルに働いてもいい従業員を選別することで、知らず知らずのうちに職場の力関係を狂わせている。そのため、このような企業レベルでの意思決定に異議を唱える従業員も出てきている。

マークさんは、リモートワークで生産的に働いていた従業員がなぜオフィスに戻らなくてはならないのか、その理由を会社側が説明できずにいることに、特に怒っている。「私たちはオフィスに戻らなければいけないと、はっきり言われました。上司たちは幽霊のようなのに」と。

「業務遂行に必要なのがインターネット接続だけなら、場所を1カ所に限定して働く必要はないはずです」

バターワースさんは、公正な雇用慣行を確立するには、結局のところ従業員と直接相談することが必要だと話す。「従業員がオフィス復帰に消極的なら、雇用主は出社が個人や仕事、そしてチーム全体にどのような価値をもたらすのか、明示する必要がある。また、特定のリモート契約に基づいて雇用している人については、なぜそうなっているのかを説明する必要があります」。

ある従業員にはリモートワークを認め、別の従業員には出社を求める理由を把握できれば、チーム内の緊張を和らげることにつながる。「役割、チーム、そして従業員のニーズを見る必要があります」と、バターワースさんは言う。「こうした決定に至った背景が理解されていれば、解決策は見つけやすくなります」。

慎重な検討と透明なプロセスがないまま出社を命じ、一部の従業員にだけリモートワークを認めるのは危険だ。オフィスに戻らなくてはならない従業員は当然面白くないと感じるだろう。あっという間にやる気が下がるだけでなく、同僚との間に問題が生じたり、長期的に職場に深い溝をつくる可能性もある。

ほかの人はどこからでも仕事をしていいのに、なぜ自分はオフィスにいなくてはならないのか。マークさんは、その理由をほとんど説明されないままだ。現在は新しい仕事を探しているという。「(上司は)オフィスへの復帰を正当化するために『チームビルディング』だとか『共同作業』というフレーズを使っている」と、マークさんは言う。

「けれども、職場で働く必要のない従業員が職場に来るよう言われるのは、公平ではないと思います。柔軟性のない企業は、優れた従業員を次々と失うことになると思う」。

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