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Sunday, May 16, 2021

パレスチナ緊迫 国際仲介で戦争の回避を | 熊本日日新聞社 - 熊本日日新聞

 イスラエルとパレスチナの武力衝突がエスカレートしている。このまま戦闘拡大に歯止めがかからなければ、全面的な戦争に陥る恐れがある。双方に強く自制を求めたい。国際社会も早急に両者を仲介し、戦争をくい止めなければならない。

 衝突のきっかけの一つは4月上旬、イスラエル当局によるエルサレム旧市街入り口の広場の封鎖だった。パレスチナ人が反発し、警察と衝突。その後も紛争が続いた中、今月10日になってパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルに向けロケット弾を発射し、報復としてイスラエルがガザへの空爆を始めた。イスラエル側は既に地上部隊も投入してガザを攻撃している。

 イスラエルのネタニヤフ首相は15日夜にテレビ演説し、空爆継続を宣言した。ハマスは、ロケット弾多数を発射して猛反撃。空爆が始まった10日以降のパレスチナ側の死者は150人を超え、多くの子どもたちまで犠牲になっている。イスラエル側の死者も増えている。もう一つのパレスチナ自治区のヨルダン川西岸でもイスラエル部隊とパレスチナ人が衝突するなど、緊張と対立はパレスチナ全土やイスラエル国内にまで広がっている。

「2国家共存」は…

 今回の武力衝突は2014年以来の大規模なものだ。この時はイスラエル軍がガザに地上侵攻し、2千人以上のパレスチナ人が死亡した。惨事を繰り返すことは何としても避けなければならない。

 イスラエルは1948年の建国以来、パレスチナを含むアラブ諸国と対立関係にあり、4度の大きな戦火を交えてきた。その際、ヨルダン川西岸のパレスチナなどを武力で占領し、イスラエル人による入植を進めてきた。

 国際社会は違法な占領を認めておらず、イスラエルの撤退を求めてきた。その上で、パレスチナ国家との共生を図る「2国家共存」を目指してきた。にもかかわらず、それに向けた交渉は7年前から止まったままになっている。

協調姿勢への転換

 米国のトランプ前政権は中東政策で、際だったイスラエル寄りの姿勢を見せてきた。国際管理とされているエルサレムを「首都」とする同国の一方的主張を認め、米大使館を商都テルアビブからエルサレムに移転した。敵対するイランを地域的に封じ込める狙いから、パレスチナを支援するアラブ諸国とイスラエルの国交正常化も仲介。パレスチナは置き去りにされ、孤立感を深めていた。

 ところが、交代したバイデン米大統領は、前政権のイラン包囲網構築から協調姿勢にかじを切り、中東各国に対話を基調とする和解機運をもたらした。逆に今、イスラエルは、米国による強力な後ろ盾を失い孤立気味となっている。

 ただ、米国は今回の衝突拡大にあたっては、イスラエルの「自衛権行使」を強く擁護。国連安全保障理事会は非公開会合を開き、緊張緩和に向けた見解を示そうとしたが、米国の反対によって一致できなかった。

 バイデン米政権は、外交安全保障の重点を中国への対応に置いている。そのせいもあって中東への関心が希薄とされ、和平担当の特使やイスラエルとの外交窓口となる大使もまだ決めていない。

中東和平再構築へ

 しかし、国際社会がこのまま手をこまねいていては、事態の悪化をくい止めることはできない。中東の混乱と混迷が深まれば、影響は世界に及ぶ。国連のグテレス事務総長は、米国、ロシア、国連、欧州連合(EU)の4者会合を呼びかけている。国際社会は一致して早急に中東和平の取り組みを再構築すべきだ。とりわけイスラエルと同盟関係にある米国には、積極的な仲介の役割が期待される。

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