感染症法で義務づけられる感染者の発生届を、ハーシスで入力している医療機関は41%にとどまることが同省の調査で分かった。9割以上の保健所が、ファクスで届く一部または全ての情報を代わりに入力している。
保健所は、相談を受けたり、感染者の行動歴や接触者を調べたりする感染症対策の最前線だ。機能不全に陥らないためにも過度な業務負担は避ける必要がある。
インフルエンザとの同時流行に備え、来月中にかかりつけ医もコロナ受診の窓口になる。発生届を報告する医療機関が増える可能性が大きい。医療現場から使いづらいと指摘があるハーシスを改善していかねばならない。
感染症法に基づく発生届は、医療機関が手書きして保健所にファクスで送り、保健所がシステムに入力して国に報告してきた。
今春の新型コロナ第1波で集計に遅れが生じたため、厚労省が医療機関も直接入力できるハーシスを構築。検査結果や感染者の氏名、居住地、症状などの情報を一元管理し、国や自治体も共有し政策に生かせる仕組みとして5月下旬に運用を始めた。
利用されない要因としては、約120に及ぶ入力項目の多さや接続手続きの煩わしさがある。外部システムに接続できるパソコンが診察室になければ、別の場所に移動しなければならない。
手間がかかり過ぎるようでは、日々の診療も担う医療現場にとって大きな負担になる。
厚労省は、最優先で報告してもらう項目を絞るといった改善を重ねている。さらに現場の声を拾い上げて、使い勝手を良くしていく必要がある。地域の医療従事者がハーシスに習熟するための機会も欠かせない。
集計した感染者情報が、国の全体状況の把握だけでなく、地域の中で感染の封じ込めにどう役立つのかを示すことも重要だ。
感染経路の解明やクラスター(感染者集団)対策、感染者の安否確認などへの具体的な活用が実感できれば、地域の医療機関の協力も進むのではないか。
正確な感染者情報の集計と分析、共有は、感染症対策の根幹だ。それに手間取るようでは、対策自体の信頼が揺らぐ。
インフルエンザ流行期は近い。ハーシスを対策の大きな力にできるよう利用を広めたい。
(9月30日)
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September 30, 2020 at 07:29AM
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