新型コロナウイルス感染拡大を受けて、結婚式や入籍で悩むカップルが増えているようです(悩める結婚式の今 キャンセル料に延期料…臨機応変に対応する式場も 延期決めた人「プランナーの生活も」)
そこで、今回は、「入籍」の意味について考えてみたいと思います。入籍するかしないかでお悩みの方は参考にしてみてください。
婚姻はどうずれば成立すのか
民法の規定では、「婚姻は戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」と規定しています(民法739条1項)。
つまり、法的に夫婦となるには、婚姻届を役所の戸籍係に届け出る必要があります。したがって、結婚式を挙げても、婚姻届を届け出なければ、法的に夫婦とは認められません。反対に、結婚式を挙げても、婚姻届を届け出れば、法的に夫婦と認められます。
民法739条(婚姻の届出)
1 婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
婚姻が成立するとどうなるのか
では、婚姻届を役所に届け出ると、どのような法的効力が発生するのでしょうか。
夫婦同氏の原則
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称します(民法750条)。このことを「夫婦同氏の原則」といいます。
民法750条(夫婦の氏)
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
同居協力扶助義務
夫婦は同居し、互いに協力し扶助し合わなければなりません(民法752条)。
民法752条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
この同居協力扶助義務は、婚姻共同生活を維持する基本的な義務とされています。
同居義務は、夫婦として同居する義務です。同居義務違反は離婚原因となり(民法770条1項2号)、離婚慰謝料の理由ともなります。なお、転勤などの職業上の理由、入院治療などの正当な理由があれば、一時的に別居することは当然認められます。
民法770条(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
協力義務は、婚姻共同生活を営むための義務であり、その内容は各当事者の事情に任されます。具体的には、日常生活の維持、病者の看護、子の養育などが挙げられます。
扶助義務は、相互的な経済的支援を意味します。夫婦は同居して共同生活をするため、相手方が要不要状態に陥った場合には、相手方の生活を自己の生活と同じように保持する義務があります。
貞操義務
条文に規定はありませんが、重婚が禁止され(民法732条)、同居協力扶助義務が規定され、不貞行為(配偶者以外の人と性的関係を持つこと)が離婚原因になることから(前掲・民法770条1項1号)、また、一夫一婦制という婚姻の本質から、夫婦は相互に貞操義務を負うとされています。つまり、不倫はダメということです。
民法732条(重婚の禁止)
配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
その他、姻族関係の発生(民法725・728条)、子が嫡出子となること(民法772・789条)、配偶者相続権が認められること(民法890条)などがあります。
民法725条(親族の範囲)
次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
民法772条(嫡出の推定)
1 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
民法789条(準正)
1 父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する。
2 婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得する。
3 前二項の規定は、子が既に死亡していた場合について準用する。
民法728条(離婚等による姻族関係の終了)
1 姻族関係は、離婚によって終了する。
2 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
民法890条(配偶者の相続権)
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
いかがでしたでしょうか。婚姻届を届け出ただけで、このような法的効力が発生することに驚かれた方もいるかもしれません。まさに、婚姻届を届け出る前後では、二人の関係は法的にガラッと変わるのです。
その中でも、民法752条が規定する「同居、協力及び扶助の義務」が夫婦生活の本質を捉えているでしょう。
新型コロナウイルス感染拡大という厳しい環境の中、婚姻届を出す・出さないを別として、一人よりも二人で協力し合って立ち向かう方が、困難な状況を乗り切れると思います。その点、「協力義務」は、既に二人の間に発生しているかもしれませんね。
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